Purdue Pharma社の話

アメリカ社会を犯している病の1つ、それがopioidなどの麻薬の浸透であることは何回か記してきた。
それらの薬が浸透させられるに当っては、医師らに対し「鎮痛剤」(painkiller)として您慂されて広まった面もある。
そうした理由から現在、80ページに及ぶ訴状を出して、OxyContainと言う薬を標的に製薬会社Purdue Pharma社を訴えているのが、マサチューセッツ州である(6月13日NPR)。

同州が被告としたのは、法人としての同社だけではない。
そのオーナー一族(現在と過去の取締役ら)16人も共同被告にしている。
同州司法長官は、知事らとともに並んだ声明で、こう言った。

「会社のやり口は明確だ。薬の売り上げを最大に伸ばし、収入を最大にする中で、死者も最大になるというものだ…」、
「会社は、誤った情報を伝えることで、社会に何百億円にも上る損害を与えた…薬の処方人らに、過大な量の薬を、過長な期間供与し続けさせた。それが中毒から、中毒死にまで至るという結果にお構いなく!」。

「2008~2017年の10年間で、マサチューセッツ州内で11,000人が、このopioid絡みの薬ゆえに死亡している。うち昨年1年のみで2000人…その中の671人は、Purdue Pharma社の薬(“OxyContain”という品名である)を処方したものであった」。

2007年頃からPurdue Pharma社の役員の何人かは、既にOxyContainを不正に害を過小評価して売り込んでいた事、州内の薬剤師などに累計15万回訪問したことを認めていた。
上記で、オーナー一族16人が、会社とともに共同被告になっていると述べたが、その半分はSackler一族の人間である。
Sackler一族の中心は3人の男兄弟で、3人とも薬剤師である。

彼らの成功物語は、現代でも最短距離のものであった。
彼らは10年ほど前の1995年に、21世紀の麻薬とされるOxyContainを作り出した。
「薬九層倍」と言う諺は、今でも真実なのだ。
その少し前、1950年代に、3人はニューヨーク市内の小さな潰れかかった製薬会社を買収していた。
それが、今のPurdue Pharma社となった。
そこで兄弟が面白半分に始めたと言うのが、W.W.Ⅰ中にドイツで発明された鎮痛剤であった。
それがOxyContainの始りだという。
現在は3人兄弟の末弟のみが残っているが、経営からは離れている。
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強かったカトマンズの女

うちの近所の八百屋のキャッシャー(レジを打っている)。
いつか訊ねたら、「ネパールから」(来た)と言っていた。
ネパールと言えば、あのヒマラヤ山脈の麓の山村が拡がる地だ。
人々はよく働き、怠けたり遊んだりすることもないという。

そのネパールに絡んだ悲哀に満ちたストーリーをNPRは載せている(4月29日)。
アメリカのKBR Halliburton社。米軍の協力会社だ。米軍の戦闘のため必要なことは何でもする万屋だ。
2001,2002年頃、12人のネパール人の男らが労働者として、ヨルダンへ渡ることになった。

Halliburton社から彼らへの触れ込みは、アンマンへの「5つ星ホテル」に雇われるという。
ところが実際には、現地で4,50日間、倉庫のような所に詰め込まれたうえ、ジプシー・タクシーでアンマンからバクダッドへの街道(別名「死のハイウェイ」)を行かされ、途中でISのような連中に誘拐されて、全員が無残な形で殺されてしまう。
本来は、イラクでの土木工事など戦闘の補助として使役される予定であったという。

NPRは、ドキュメンタリ作家のCam Simpsonの記事を元に、そのイラクで虐殺された12の男のうちの1人の妻であったヒマラヤ山脈の麓育ちの女性、Kamalaの物語を載せている(4月29日)。
2005年に一旦は精神的にもどん底に沈んでいた彼女。
Simpson氏が再び会った2013年には、別人のように内側からの力を取戻して、絶大な精神力で周りの人々をリードしていた。
更にSimpson氏が注目したのは、彼女が、人間を危険な所に送り込むことを請け負っているHalliburton社のそうしたやり方を糾弾すべく、その「生き証人」となることを恐れていないことであった。

Simpson氏は、それを可能にするに当って力を貸した2,3の人権派弁護士がいることも発見している。
彼らは、Halliburton社が合衆国政府から、そうした人間の供給網造りを請け負って儲けていた。
弁護士らは、そのメカニズムを明らかにするのに力があった。
そこでも、Kamalaの証言は大きかった。
また10年を超えるSimpson氏による、この問題の粘り強い追求も。

メキシコ国境での不法移民

NPRは、メキシコ国境からの不法移民について、国土安全省の前長官Jeh Johnson氏にインタビューしている(6月9日)。
同氏は、「法治国として、やらざるを得ない面もある…」と譲歩している一方で、今のトランプ政権のやり方に批判的で、「これは、我々がアメリカ的と考えるやり方に反対のやり方だ!」と言っている。

彼の長官時代には、
「百万人の人を捕まえて、逆送還した」、
「18年前のピーク時には、160万人を捕まえた」とも言っている。

しかし今は、以前とは捕まる人のタイプが違ってきたとも言う。
「かつてはメキシコからの男で、単身者が主だった…その数は何%かに減っているが、今は代って、グアテマラ、ホンデュラス、エルサルバドルなどの南からの不法移民で、それも女子供が多い…それが、これら3か国での貧困と社会の暴力ゆえに、累増している彼らが命からがら逃れてくる。
それが3年前から起こっていたが、しかし自分の長官時代には、子供を母親から引離すなんてことはしなかった。
中米のこの3国から親が、子連れで、大変な辛苦を経ながらメキシコを通ってきても、国境で捕えられる。しかも子供らと引離されると判っていても、やってくるのは、それでも子供らが母国に残っているよりも、「少しはましな生活が送れるように」、との願いからである。
つまり、中米のこれら3国の社会、経済の状態は、それほどひどいということである。
従って、アメリカ合衆国としては、国境でどうこうすることよりも、これらの国の状態をもっとましにすることを考えなければならない。

元国土安全省の長官は、こう結んでいる。

Koch Bros.の政治献金

アメリカには「桁外れの大金持ち」がいること、その1つ、コーク兄弟(CharlesとDavid Koch)のことは前にも触れた。
これまで、政界(保守の共和党一本槍)に多額の寄付・献金をしてきている。

NPR(5月17日)は、トランプ時代の今は「右寄りの意味が変わったのか」と問うている。
それというのも、そのコーク兄弟の寄付先にもかつてない変化が生じて世間の目を欺いているからだ、と伝える。

先ずは、コーク兄弟のネットワーク中でもヒスパニックの人達への寄付の窓口である。
そのための機関“Libre Initiative”が、連邦政治の世界で民主党の勢いを助けるような先へも資金を出していることである。
具体的には、Libre Initiativeは民主党の政治家何人かに、政治活動に使う広告費の一部として資金援用をしている。
加えて10万人の所帯にメールで「共和党、民主党の政治家の活動に感謝しよう」との添え書きとともに、Dreamersのための予算などでの、政治家らの活動を記したものを送っている。

更に、この中間選挙で、民主党が有利になるようなことに力を入れ出したという。
確かにコーク兄弟は、ガチガチの右翼ではない。
共和党の中でも、むしろリベラルな方に傾いていた。
トランプ大統領になって、共和党が関税、移民問題などで強硬策を打ち出す中で、コーク兄弟らは寧ろ超党派的な動きを見せている、と言えなくもない。
というのは、コーク兄弟らはこの辺、
(ⅰ)刑事訴訟制度の改正(オバマ大統領が熱心に取り組んでいた)、
(ⅱ)終末医療の問題、
(ⅲ)不法移民の子供(いわゆるDreamersら)保護の問題、
等に力を入れている。

ロシアによるサイバー世界での撹乱戦術

アメリカの2016年大統領選挙の時期に焦点を合わせたように、ネット上で様々な流言飛語を流し、アメリカの世論を撹乱させようとしたロシア系のIRA(Internet Research Agency)のことは前に触れた。

NPR(5月16日)は、特別検察官Robert Muellerのチームが、その絡みで世論撹乱などの元凶を突止めたことを伝えている。
一連のネット上での撹乱工作を統括・指揮していたのが、ロシアのプーチン大統領の側近のYergeny Prrigozlin氏と、彼がコントロールしていたConcord Management & Consulting LLC(ロシアのSt. Petersburgに登記されている)であるという [1]。

NPRは、このConcordが中心となってIRAなどを使って、アメリカの2016年大統領選に干渉したとしていて、その件で13人の個人と、もう2つのロシアの事業法人とともに、同社も現在Mueller特別検察官により起訴されているという。

被告Concordの代理人弁護士をするEric Dubelierは、5月16日、ワシントンD.C.の裁判所法廷でMueller検察官による訴えを争うと述べるとともに、抗弁書を提出した。
その中味は、
(ⅰ)「法の適正手続」違反
(ⅱ)特別検察官の無権限、
(ⅲ)訴追の恣意性、
などに加え、Mueller氏のチームが提出予定と言う2テラバイトのデジタルデータに対する異議などから成る。

なお、この2テラバイトのデータにつきMueller側の弁護士の1人は、「これは、ロシア側の活動が如何に広範だったかを示すものだ」、と述べている。
次回期日は、当事者の整理を中心に6月15日に定められた。





[1] このプーチン大統領の側近のYergeny Prrigozlin氏は、その仇名が「プーチンのコック」(ないしシェフ)で、その前職が、実際にホットドッグ屋から、次に、上記のIRAの活動へと行ったという。