連邦司法の中立性とトランプ大統領

トランプ大統領は、選挙公約で、ワシントンの沼地(公職や官僚組織)を干拓して、綺麗な芝生にするとしていた。
その絡みで、連邦の裁判官にも中立的な人(保守?)を持ってくるとしていた [1]。

NPR(1月21日)は、その中でトランプ大統領が最高裁の判事1名(Neil Gorsuch)に加え12人の連邦控訴裁判官の選任を行って、いずれも上院の助言と承認を得られていることを伝える。
トランプ大統領は、それらについて「まだこれから続くよ!」と公言し、「故スカリア(Anton Scalia)判事型の人をピックアップする」、と述べた。
この状況を、保守派は拍手喝采している。

一方、民主党系の人や、いわゆる公民権運動家らは、懸念を露わにしている。
トランプ大統領の選別が「一色に偏っている」というのだ。
91%が白人で、かつ77%が男性である。NPRは、1人の公民権運動家の評を載せている。

「これじゃ、まるで法科大学院が白人しか入れなかった、また女人禁制だった時代じゃない!」、
「そんなのは、もう何世代も前の事でしょ!」、
「この人達を見ると、どれもゲイやレズビアンに反対の人でしょ!」。

これに対し、スカリア判事の下で働いていたウェラン(Ed Welan)氏は、
「トランプ大統領による任命中にも、3人の女性と2人のアジア系が含まれている」とし、もっとその傾向が強まればいいが、として
「任命は、どうしても自らをサポートしてくれる人々の中からとなりがちで、その点、オバマ大統領と比べると、トランプ大統領の支持基盤は人種の点で広がりがない」、と述べている。

ホワイトハウスのマックガーン(Don McGahn)補佐官は、これまでの任命を要約して次のように言っている。
「この人達は、いずれも確立した先例を含む法文の言葉を重視する原典主義(originalism)、文理解釈重視(textualism)の人々だ。
どの人も皆、現役裁判官(sitting judges)だ…つまり経歴書通りの人で(paper trails)、未知数ではない。
しかし全米法曹協会(American Bar Association)は、また別の評価をしている。

また、進歩派の批評家は、「彼らは皆3~40代だ…ということは、40年近く勤めるだろう。もう少し、その辺も考えて任命して欲しかった」と言っている。

一方、トランプ大統領の方は、スピードを緩めそうもない。
ホワイトハウスも、議会上院も、今のうちに出来るだけ多くの裁判官を決めたい意向である。
11月の選挙後に、上院の構成がどうなるか、誰にも判らないからだ。




[1] 連邦裁判官の選任権は大統領にあり、それには、上院の助言と承認が必要とされているのみである(Ⅱ,2(2))。
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アメリカ合衆国に対する評価(世界)

ギャラップ(Gallup Poll)によると、就任1年のトランプ大統領以下のアメリカ合衆国の指導力に対する世界の評価は、丁度30%と、G.W.ブッシュ大統領時よりも2桁低い数値を示しているという。
これに対し、オバマ大統領時(2016年)には、48%あったという(1月19日NPR)。 [1]
もっとも、ブッシュ大統領時代も最後には、最低の34%まで低下している。

ギャラップ調査は、これと反対のマイナスのイメージも示している。
それによると、アメリカ合衆国に対する(マイナスの)評価は43%で、ドイツ(25%)、中国(30%)、ロシア(36%)よりも高く、これは主要国(any major world power)の中でも、この10年来の最高だという。

問題は、このようにアメリカに対するイメージの低下が著しい国の中で、カナダの評価(60%から20%へ急降下)、メキシコのそれ(同じく44%から16%)が、つまり2つの隣国からの評価の急降下が挙げられていることであろう。

南北アメリカを通してだと、プラスの評価点の平均は24%で、オバマ大統領時代最後の49%の半分にまで落ち込んでしまっている。
反対に、その間にアメリカに対する評価を上げた国は、リベリア(+17%)、マケドニア(+15%)、イスラエル(+14%)、ベラルーシ(+11%)だという。
アフリカ大陸の国々は、概して対アメリカ合衆国に対する評価が上の方であったが、トランプ大統領の下で、それも今や51%まで下ってきていた(近時のトランプ大統領の「肥溜め」発言で、更に下っていよう)。



[1] 今回のは、2017年3月から11月にかけて行われた調査の結果を纏めたものだという。

トランプ大統領への毎朝の報告

NPRは、トランプ大統領が日々、側近らとの間で行っている情報交換の場についても報じている。
この種の内幕は、日本ではあまり聞いたことがない。NPRでも「publicからは見えないが」、と断っている。
毎日欠かさず面談する相手方の第一は、CIA長官ポンペオ(Mike Pompeo)氏である [1]。

「ほぼ毎日のようにホワイトハウスに詰めかけて報告している。大統領は、結構突っ込んだことを訊ねてくる(…asks hard questions, he’s deeply engaged)。激しいやり取りなどをすることもある」。

NPRによれば、こうした毎日のミーティングは3~40分続き、国際問題、国の安全保障などに係ることもあるらしい。
ミーティングには、マックマスター国防補佐官( H.R. McMaster)や、国家諜報長官コーツ(Dan Coats)などの諸氏も陪席することがあるという。

大体ミーティングは、3つの部分に分けられる。
第1が、その日(前夜)のハイライト、重要な出来事の報告(その日は、トルコ軍が北シリア内で軍事行動を起こしたこと)であり、次に近い将来に起こりうること、たとえばダボスの世界経済人会議などについてである。
第3は、必ずしもニュースや動きに捉われない、少し深い問題での学習的な会話である。

この朝の報告会のやり方は、大統領によっても少しづつ違う。
たとえばオバマ大統領は、紙に書いたものを読むほうを好んだし、CIAによる口頭の要約でよかった他の大統領でも、「必ずしも長官でなくてもいい」とした人もいた。

しかし今のポンペオ氏は、トランプ大統領とも馬が合い、日々の会合を楽しくやっている。
報告の中で大統領は時に、より突っ込んだ説明を求めたりすることもあるとして、ポンペオ氏は、「イエメン国内での戦い」を挙げていた。
大統領が、そこでのコレラの発生状況や飢餓による死者のことなどを質問し、2,3朝続けてその問題を問うた上、その近隣諸国のうち、どの国の誰と接触するべきかを、はっきりとわかるようになったことがあったという。



[1] これをCIA長官が明かしたのには、記者らから「大統領は、ちゃんとやってるのか」式の質問でも投げかけられたかららしい。

アメリカの移民法の大変更

少しばかり白人至上主義(white supremacist)的なところのあるトランプ大統領。
この処、人種差別者(racist)とも非難された。
移民(制限)の話しで「ノルウェー人を歓迎する」という一方で、アフリカなどの国を「便所の穴」呼ばわりしたからだ。

アメリカは、1924年から1965年までの丸40年間というもの、移民法であけすけな人種差別を行ってきた。
今となっては考えにくいが、当時は世界の自由、平等、民主の旗頭を以って任ずるアメリカが、臆面もなく、連邦法により、そうした酷い人種差別を実施していた。
国別の割当て制で、年間の移民人数を決めていたということである。
ドイツ5万人、イギリス34,000人、アイルランド28,000人、ノルウェー6,400人(人口比で行くとダントツに高い)。
アジアの国々は、1国当り各100人、アフリカ大陸からだと、大陸全体で1,200人。

このような割当制も、一応の調査・研究をベースにしていた。
議会が1907年に命じた研究で、どの国から、どんな人(知的レベル、教育など)が来ていて、この国で何になり、どんな仕事をしているか。この「民族大辞典」では、そうした国(民族)毎の一般的性質論も記されているという(1月13日NPR)[1]。

こうした調査・研究をベースにしたのが、1924年法であり、それ以来40年間確立していた人種差別的割当制であった。
立法に当って参照した人の中に、アマチュア優生学者のMadison Grantがいた(1916年に本を出している)。
彼の説では、人類はCaucasoids、Mongoloids、Negroidsに3分類でき、CaucasoidsとNegroidsとを「一緒にすることは不可」としていた。


[1] たとえばスラブ系(slavic)は、「宗教で狂信的な一方、ビジネスでは時間と正直さ無視など、また南イタリア人は、「興奮し易く、衝動的、かつとても想像力豊かだが、実際性に欠ける…」などである。

アメリカの在ロンドン大使館

トランプ大統領が、予定されていた目先のイギリス訪問を止める(延期する)と、例の如くツイートした。
そのことが波紋を広げている。メディアは、それに2つのポイントを絡めている。

1つは、彼とイギリスとの間柄、間合いの問題。
「今1つよくないこと」である。第一にイギリスの世論がある。
「人々からとても嫌われたアメリカ大統領」という烙印が押されている。
それに加えて、テレサ・メイ首相との気まずい間も取りざたされている。

その1つ、「アメリカ大使館をテル・アビブからエルサレム(イスラムの聖地でもある)へ移すよう」指示したことに絡みなされた「イギリスはどうするのか?」の質問に答えて、メイ首相は、「あんな頭のおかしな人の真似はしない…」式の返事だったという。
これが、トランプ大統領の耳に入った。

彼女に対し大統領も喧嘩腰である。
彼女の他の発言に対しても、「あんたの国のテロを失くしてから言ってくれ」と言ったという。

第2に、このキャンセルに合わせてトランプ大統領がロンドンに新しくできるアメリカ大使館の埈工式に出ないことの表明がある。
今までの大使館は、王宮から直ぐのセント・ジェームズ地区に接するMayfairにあったが、老朽化し、治安上と保安上の見地から、オバマ大統領により売却が指示され、それの代替として、テムズ川沿い(南側)に新大使館が、それこそ様式からテクノロジーから、何から何まで最新式のものが、このほど建てられた。

ところがトランプ大統領は、今回の延期で、この新大使館の“cut ribbon”の式にも出ないことになる。
ツイッタ―でも、「場末みたいな所」(off-location)と、そこのWandsworth地区にケチをつけて、「出ない」とコメントをしている。

確かに、その地区に行ってみると、電車の線路からも近く、発電所も近くにあり、クレーンが林立する処である。
おまけに新大使館の建設費には、約10億ドル(1,100億円)がかかっているという。
不動産を得意としてきた商売人のトランプ大統領にとって、これら一連の話しは、大変不満足なものであろう。