移民問題で厳しくしたいアメリカ

移民問題はアメリカにとり、寸時も忘れられない問題だ。

このところの焦点の1つがDACA、子供の時に不法移民である親とともに入国した子らを、どうするかである。
もう成人して、多くが社会人(中には合衆国軍人)になっている。

トランプ大統領が「メキシコとの壁」とともに、この問題、DACAの処理に頭を捻っていたことは、広く報じられている。
去る10月8日(日)には、大統領は反対党の民主党の大物2人(議会の上下両院の各リーダー、ペロシ氏とシューマー氏)をホワイトハウスに招いて、夕食を共にしている。

NPR(10月8日)は、この夕食会から出てきた3人が3人ともに、このDACA問題でそれぞれ違った内容の話をした(一方、共和党の面々は、一斉にこの会のことを非難している)と伝える。
殊に、ペロシ氏とシューマー氏ともが、「ホワイトハウスが発表した内容が、夕食会での話しと違う…」と述べている。

そのホワイトハウスが発表した内容とは、一体どんな内容なのか。
次の10項目である。

(ⅰ) 国境の壁は間違いなく造る
(ⅱ) DACAの子らは間違いなく帰国させる
(ⅲ)「難民」の制度を見直し、より厳しくする
(ⅳ) 不法な越境行為を取り締まるため、370人の専門の裁判官と1000人の執行官(ICE)を新たに雇う
(ⅴ)「聖域都市」は無くす
(ⅵ) 法の執行を厳しくするため、1万人の執行官と300人の検察官を新たに雇う
(ⅶ) ビザの延長による滞在を厳しく取り締まる
(ⅷ) アメリカの労働者を守るべく、労働ビザを厳しくする
(ⅸ)「親族だからとして…」のビザを、「夫婦と子供」のみに限るようにする
(ⅹ) アメリカの労働者を守るために、いわゆる「グリーンカード」につき、ポイント制度を設けて管理する
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トランプ大統領と共和党

トランプ大統領が、法治国の政権運営の「要」となる司法長官に任命したのは、アラバマ州からの連邦上院議員だったセッション(Jeff Session)氏。

任期途中で空白になった上院議員の席は、臨時の措置として州議会の授権を受けた、その州の知事が任命することができる(連邦憲法、修正ⅩⅦ(2))。
セッション氏の後任には、同じアラバマ州の共和党(GOP)から、ストレンジ(Luther Strange)氏が任命されていた。

今回、その補充任期切れでストレンジ氏は、新たに選挙によって州民の洗礼を受ける必要がある。
このストレンジ氏は、トランプ大統領と「馬が合って」いるらしく、同氏の予備選挙のため、大統領がわざわざ現地アラバマ州ハインツヴィルに入った、とNPRは伝えている(9月22日)。

ストレンジ氏は、GOPの主流(Establishment)がサポートしているが、ここに変な「番狂わせ」が出てきた。
アラバマ州の最高裁長官をしていたが、頑固一徹で時代遅れの判決をすることで有名だった、そのために2回もその職を解かれていたムーア(Roy Moore)氏が [1]、予備選挙でストレンジ氏の対抗馬として出てきたからである。

つまり、司法以外の、この政治の世界では完全なアウトサイダーの筈だったムーア氏が、GOPの主流に対抗しようという訳である。
トランプ氏も、そういう意味ではGOPの主流と言うよりは、初めからアウトサイダーとして出馬してきているが。

そのトランプ氏が、今回は正統派であるGOP主流の候補の応援に廻っているところから、選挙でトランプ氏を支えてくれた筈の非主流ベース(それがムーア氏の支持に廻るとして)との関係がどうなるのか、囁かれている [2]。

トランプ氏のお得意のツイートを見ると、大統領は感動詞とともにこうつぶやいている。
「あの男(Big Luther)は大好きよ!忠実だし、よくやってくれる!」
これは、ストレンジ氏が短い上院議員の期間中での投票実績を見ての話しのようである。

NPRが言うのは、このように彼のバックグラウンドとは違う正統派支持に回るのは、トランプ大統領としては珍しく、目立つ動きだという訳である。
しかも、ムーア氏を応援しているのは、GOP主流ではない。
更にもっと右の、例のバノン(Steve Bannon)氏やサラ・ペイリン(Salah Palin)などの各氏である。









[1] 州の最高裁の前庭に古くからずっと安置されていた「十戒」を刻んだ石の彫刻を、州民からの「宗教と国との分離を定めた憲法(修正Ⅰ)違反だとして、除去す両命じた連邦裁判所の命令を拒んだこと、更に連邦最高裁の同性婚を認める判決を争ったことなどが有名である。

[2] サラ・ペイリン女史は、「ムーア氏の支持は必ずしも反トランプを意味しない…むしろトランプ大統領を勝利に導いたPeople’s agendaのサポートに他ならない…」と述べている。

トランプ氏とゴールドマンサックス

コーン氏、アメリカの国家経済会議の議長は、1990年にウォールストリートの雄、ゴールドマンサックスに入った。

偶々、上司としていたのが、目下ゴールドマンの代表(CEO)を勤めるブランクファイン(Lloyd Blankfein)氏であった。
以来ずっとブランクファイン氏の下でサラリーマンとして、のし上がり、ブランクファイン氏がCEOになると、その副代表(COO)となって10年経っていた [1]。

前注誌は、彼がNo.2の地位に満足できないで、鬱々としていたらしいと伝える [2]。
そんなところへ、トランプ氏からこの国家経済会議議長の声が掛ったのは、ある意味、コーン氏にとっては格好の機会とも言えた。
これまでのゴールドマンの先輩で、栄誉ある転身をした、たとえばルービン氏などの足跡を辿る形と言えた。

一方のトランプ氏といえば、むしろ「ゴールドマン嫌い」と言ってよかった。
ゴールドマンに限らず、アメリカの大手金融機関は、トランプ氏を一様に敬遠していた。
ゴールドマンに至っては、「1ドルたりとも貸すな!」、「1株たりとも売買するな!」とお達しをしていた。

トランプ氏は、1991~2年にタージ・マハルなどに金を掛け過ぎ、4つの(その後の件を加えると、6件の)破産申し立てをしていて、「俺は連邦破産法の専門家だ!」などと吹聴し、現にテレビで破産法の話をしていた位である。
そんな訳で、国内の金融機関とはあまり付き合いがなく、「メインバンク」としては、ドイツ銀行が入っていた。

トランプ氏はまた、選挙中の公約として「ワシントンなどのアメリカの政治の中心は沼だ、干拓して虫干しする」と言っていたのであるから、ウォールストリートの雄のゴールドマンに流し目を送るなんてことは、在り得ない筈であった。

それが今はどうであろう。
前注誌は、マラ・ラーゴ別荘(プライベートクラブとして使用中)内の狭い会議室内に、大統領を含む男14人と女性1人が狭角レンズ写真一枚に納まっている様を載せている。
それを見ると、その中に4人もの元ゴールドマンの人間が座っている。皆一点を注視している。
4月6日のアメリカ軍によるシリア政府の空港へのミサイル攻撃の様子である。

4人もの元ゴールドマンの人間とは、コーン氏の他に、財務長官ムニューチン(Steve Mnuchin)氏、先に辞めさせられた主席戦略官だったバノン氏、それに国家安全顧問代理パウエル氏である。

前注誌は、以上のような内容の記事を、「ゴールドマン・サックス、ホワイトハウスを占拠!」との見出しで出してきている。
これに関しゴールドマンの現CEOブランクファイン氏も、41階の会長室からハドソン河を見下しつつ、
「こうなったのは、正に正当化されるべきことですよね!大統領が『いい人』を探して、たまたま、そこにゴールドマンの人々が多く集まったということで…」。

前注誌は同時に、そこには「皮肉な巡りあわせがある」、としている。
上に述べたとおり、ゴールドマンなどアメリカの一流金融機関は、トランプ氏を敬遠し、近付かないようにしていた筈だったからだ [3]。
逆に言えば、トランプ氏の方も、元来からゴールドマンを好きではなかったからだ。

第一、コーン氏も、会長のブランクファイン氏も、民主党であることは周知の事実である。
その選挙の期間中、トランプ氏の方は、ずっとゴールドマンの悪口を言い放しであった。
共和党候補として争っていたクルス氏の妻が、ゴールドマンの銀行部門の長であったこともあり、目の敵のように攻撃していた。
「こいつら(ゴールドマン)は、彼の上にtotal、total、totalコントロールをしているんだから…」と。
そして「ゴールドマンこそ、悪の本能寺だ!。彼らが、アメリカの工場を海外に持って行って、アメリカ人のjobを失わせている!」と言っていた。

そのトランプ氏が、2016年11月、予想外に当選を決めるや(11月9日の朝、市場は1000ポイントの暴落を記録していた)、掌を180度返したかのような態度に出た。
これを前注誌は、トランプ氏がウォールストリートに向って、「俺も、見捨てたもんじゃないよ!バカ(lunatic)じゃないよ!」と見せたかったからだとしている。

トランプ氏は、人に対して
「あれは私の○○将軍で…」とか、
「あそこにいるのが、トランプ政権の○○で、ゴールドマンの社長をしていた人だよ!」、
「元エクソンのCEOだった人で…」、
などと言って、得意になっている人だ、とも記している。

あの「媚びへつらい」、として悪名高くなった6月12日の閣議の一部生放送で、ムニューチン氏は言っている。
「諂ってなんかいないよ!副大統領が始めたから、僕も部屋の皆の気持ちを察して言っただけさ!批判的な言葉はなかったかだって?…そりゃフェイクニュースの方に聞いてくれ!」。

前注誌は、10年もCOOの座で尻をもじもじさせていたコーン氏をピックアップに行ったのも、大統領の娘婿クシュナー氏だという。
その仕事がまた、この娘婿にとって「とても魅惑的な、興奮に値するものであった…」としている。

そのコーン氏が、今やトランプ政権を、少なくとも、その財務・金融面から支えているとの見方がある。
先日も、NPRがトランプ政権で人々がドンドン辞任させられている中で、もしもコーン氏が辞めたら、ウォールストリートは、どう反応するだろうか?と案じる記事を載せていた。








[1] ゴールドマンといえば、そのパートナーとなる人は、アメリカでも最も羨ましがられる人に決っている(Vainty Fair、2017年6月号)。

[2] ブランクファインが2015年9月にリンパ腫を患った間に、コーン氏は、代理としての外部活動をした際の反響から、自信過剰になっていた周囲に働きかけたとして、前注誌はこれを“made a play to replace Lloyd”と書いている(しかし、取締役会メンバーは、ブランクファイン氏への信頼が厚く、動かなかったという。

[3] 前注誌は、2016年選挙でもゴールドマンはヒラリー・クリントンには675,000ドルの献金代りの講演料を払っていたのに対し、ゴールドマンの労使併せて、トランプ氏には5000ドルも出していない(クリントンには献金として34万ドル)という。

アメリカの記念品と考古品

トランプ大統領が、オバマ政権下で成された色々な措置について、ひっくり返す決定をしている。
環境問題も、その最先端の1つだ。「国立記念」(National Monument)というのがある。
アメリカ合衆国としての歴史上の記念像などのことだ。
これには、特定の場所にある連邦所有の広大な土地も含まれる。
しかし、放牧農家等地元の住民は、指定に反対していた。「やり過ぎだ!」と見ていた。

トランプ氏の下の内務長官(Interior Secretary)が、早速その見直しに着手した。
2,3ヶ月かけて27の国立記念の土地を見直し、大統領に勧告として提出した。
その結論は、指定を取り消すべき対象は1つもないが、うちいくつかについて、その規模の縮小を提言している。

NRPはこの問題について、オバマ政権下で内務長官をしていたジュエル(Sally Jewell)氏に対し、「この、まるで正反対の動き」、をどう考えるか、インタビューしている(8月25日)。

「まるっきりダメ!大統領にそんな取消権があるなんて考えちゃ駄目」、彼女の開口一番の返事である。

彼女がそういうそこには、1906年に作られた連邦法The Antiquates Actがある。
主にインディアンらが聖地としてきた土地や、埋蔵物を保護するために立法されたものであった。

ジュエル氏は、「未だかつて、どの大統領も、一旦指定されたものの取消を行った人はいない…法律の下で、それは、連邦議会の権限だ…1976年と、1970年によって先例も作られている…」、と説明する。

NPRの人は、「オバマ政権下では、それまでのどの大統領もしなかったような、国立記念の指定ないし拡張を29回もやって来ているが、それはやり過ぎではなかったのか」、とも質している。

これに対するジュエル氏の答え、
「あれは実際には、土地だけというより、水域の方が多い。取消は、カーター政権下では例がある。アラスカでの指定を連邦議会が後に修正した…」。

その上で彼女はくり返す。

「オバマ政権下でやり過ぎたなんてことは、絶対ない…国も社会もどんどん活動を、土地の利用を拡げつつある。かつてのように静止していない…インターネット時代で、何かあると忽ち広まってしまう…色々な人が現地に立ち入り、写真を撮ってネット上でツイートしたり、フェイスブックに載せたりする…そうなると、法律によって保護しないと、考古物荒らしにやられてしまう…」。

ブライトバートに戻った主席戦略官

トランプ氏のホワイトハウス内で主席戦略官として、大統領の新任早々から、如何にもトランプ氏らしい国粋主義的な政策を矢継ぎ早に打ち出してきたバノン氏。
これらの政策としては、イスラム6か国を標的にした入国制限、それら外国人の国外退去処分(deportation)、国境の壁の建設などなど。

そのバノン氏が、かねてからホワイトハウス内で色々と摩擦を生じさせていると取りざたされていたが、遂にトランプ氏によってそこから外に出された。
彼の元居た鞘のブライトバートニューズ社のCEOへと戻った。

そこでNPRは、彼が早速、今度はホワイトハウスの外から同じことを成し遂げようとしている。
彼自身の造形を押し付け始めた、それも極めてスピーディに、と報じている。
彼が考える「これがトランプ氏の真にあるべき姿だ!」、
「グローバリストなんかじゃない!反対に、文化戦争を勇敢に戦う戦士だ!」を、その演出行為を、実現しようとしている。

ホワイトハウス内でバノン氏とちょくちょく衝突していた人と言えば、トランプ氏の娘婿(長女の夫)主席アドバイザーのクシュナー氏を筆頭に、その数も1人や2人ではない。
早速、具体的に出てきたのが、ブライトバートでの次のような大見出しである。

マックマスター(McMaster)氏について、として
「トランプ氏のアフガン政策の何処がオバマ氏のそれと違うんだって?」が1つ。
第2に「エジプトの外相は、クシュナー氏を鼻先で軽くいなしたよ!」、という。
更に、元ゴールドマンサックス会長で、トランプ氏の首席経済顧問のコーン氏についても、
「ウォールストリートのエリートらとパーティーごっこ!」と書かれている。

NPRの記者が、以上のような例から言うのは、バノン氏がホワイトハウスの主席戦略官でなくなっても、外から杖で(インターネットで、自らの携帯で)突くことによって、結構、共和党の連中を、神経質にさせられる。
自らの肩ごしに周りをふり返らせ、そわそわさせている、ということのようである。