トランプ大統領によるNAFTAの改訂

NPR(5月17日)は、元合衆国貿易代表部のカーラ・ヒルズ(Carla Hills)氏にインタビューし、難航しているNAFTA(北米自由貿易協定)の改定問題について尋ねている。

NAFTAの下での貿易は、現在、アメリカ合衆国と世界全体との貿易額の3分の1を占めている。
またカーラ・ヒルズ氏がその中で言っているように、この協定の下での3か国の貿易体制の統合により、「世界の中でも、最も生産性が高く効率的なintegrated supply chainを作り上げた」ということである。

「だが」、とカーラ・ヒルズ氏は言う。
「今のままで満足はできない。NAFTAは、25年と年を取ってきた。それを壊したり、より保護主義的にしようとは誰も思わない」。

NPRの記者:「だが、メキシコ代表は、アメリカによる5年毎に一旦終了して再交渉する条項(sunset clause)の提案に驚いているという?」

ヒルズ氏:「そりゃ驚きますでしょう。だって5年毎に変るとなったら、誰も、まともな事業計画の下で契約を交すことなんて、出来ませんからね!メキシコ人が、たとえばアメリカにベーカリー工場を作って、売ろうと計画し、土地と建物を手配し工員を募集したにしても、5年後がどうなるか不明では、最後の決心がつかないでしょう」。

NPR:「アメリカの現政権、共和党は、その本来の哲学『自由貿易』を捨てちゃったんですかね?」

ヒルズ氏:「自由貿易を支えてきたアメリカでの色々な制度が、この処かなりの困難に苦しんできました。私が仕えたH.W.ブッシュ大統領にしても、自由貿易の哲学を信奉しており、それは、国々が経済で緊密に組むことで、安全面でも国の保障度が高まることを意味したのです。ところがその後、変な世論が一部に出てきました。『自由貿易により、仕事を奪われた…』です。これは正しい理解ではないのですが、賃金や効率が問題なのですが、我国が為すべきことが2つあるということなんですが、それが一般には理解されていない。
その2つとは、1つは、労働力を適切に再分配し、且つ訓練することで、もう1つはインフラを現代化することです」。

NPR:「大統領は、改定に強気で臨んでますね」

ヒルズ氏:「彼には、いくつかの選択肢があります。1つは、冷却期間を置くこと、交渉を2019年に延ばすことです。その間に産業界、ロータリークラブ、市長会、労働界の意見が出て来るでしょう。大統領に対し、NAFTAの必要性を訴えたりする人も出るでしょう…」、「アメリカ合衆国ほど、立地的に恵まれた国がありますか。東と西に大洋があり、南と北には素晴らしい隣国。これを、我々の安全と繁栄のために利用しない手はないのです」。
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訴訟魔と利益相反問題

事業家トランプ大統領は、大統領になる前、訴訟魔と言ってよいほどで、3500件以上もの事件を経験していた [1]。
そのトランプ氏が大統領になったことで、トランプ大統領の事業に絡んで一種の利益相反に似た問題を指摘して、もう既に3件もの訴訟が新たに起こされている。

それら事件に共通して言えるのは、合衆国憲法の条文中の、いわゆるForeign Emoluments Clauseに抵触しているとの疑だ。
憲法の条文中の文言は、“he shall not receive… any other Emolument from the United States, or any of them”であり(Ⅱ,1(6)の第2文)、Foreignは、解釈を加えた言葉と言える。

NPR(6月7日)が伝えるのは、同条違反を理由とするこの3件目の事件で大統領が議会の承認を得るようにとの保全命令を求めていることだ。
議会上院、民主党(コネチカット州)のRichard Blumenthal議員などが申立人となっている。

1件目の訴訟は、トランプ氏の大統領就任日当日(2017年1月20日)に起こされ、そこでの請求原因は、トランプ大統領が所有する豪華ホテルTrump International Hotel、それまでOld Post Office Pavilionだったのを、トランプ大統領が買収して改装したものに関するものである。
ペンシルヴァニア通りにあり、アメリカの官民の人々だけでなく、多くの外国の高官らが頻繁に宿泊してホテル代を払っていく。
それを“Emoluments”と構成しているのだ。

第2のケースは、Emolumentsとは必ずしも関係ない。
そこでは、同ホテルと競合する近くのホテルや会議場の会社が、自分達の商売の邪魔だ、と訴えている。

NPRが言うEmolumentsを受けることを理由とするの規定が侵されているのでは、と言う事例が先月(5月)にも生じてきた。
Trump Organizationが手掛けてきたインドネシアでの巨大リゾートプロジェクト(ホテル、ゴルフコースを主とする)に中国の国営会社がパートナーとして参加してきたからだ。

トランプ大統領が、このところ中国に対して重い関税をかける一方で、電信分野の中国国営会社ZTE Corp.に対しては、同社が先の違反行為を理由に課されている制裁金を、「少し軽くしてやれ…」、と商務長官に指示したとも伝えられている。
そして、これこそまさに、「建国の父祖」らが、このEmoluments Clauseを設けた理由を絵に画いたような事例だとするBlumenthal氏の言葉を引用している。
同条は、「大統領が、問題となっている特定の件に、何らの利害関係もない人として判断できるように…」、と父祖らが考えて設けた条文だからだとしている。







[1] 小著「ドナルドトランプ―その人に迫る」の4(ニ)訴訟魔としての実績と逸話、そこでは「彼が大統領候補となることを決めた後でも…70の新件の訴訟が提起された」と記している。

首席補佐官John Kelly

元海兵隊の将軍で、昨年の7月にそれまで居た国土安全省長官から、ホワイトハウス内に移り大統領の首席補佐官となっているJohn Kelly氏。
大統領が頻繁に人々の首を切る中で、まだ職に残っている。
しかし、大統領との仲が円満か?というと、どうもそれは違うらしい。

というのもKellyは、一度ならず大統領のことを「馬鹿」“idiot”と呼んでいるからだ。
それも彼がその言葉を口にするのを直接聞いた、と言う人は1人ではない。
メディアで記録しているだけでも数人いる。

そんな中NPR(5月1日)は、ホワイトハウスのスポークスウーマンSanders氏が、前日のNBC Newsをはっきりと否定している。
つまり「Kelly氏がVA(退役軍人)庁長官に転出するのでは」、と言う噂のことである。

「大統領も首席補佐官も、Kelly氏の今の役をとても気に入り評価している…」と言っている。
Kelly氏自身も4月30日に、そのNBC Newsを、「まるで馬鹿げている」(total B.S.)と呼んでいた。
そのNewsでは、Kelly氏が大統領の政策の理解や政府の統率などに対する足りなさを挙げて小馬鹿にしている、などと伝えていた。
これに対しKelly氏は、「トランプ大統領に近い人々の顔に泥を塗ろうとする、例のやり方だ!それにより現政権の成功から目を逸らそうとしている…」、と反論する声明を出している。

Kelly氏に対しては、任命されたときに「混乱気味のホワイトハウスのWest Wing内に欠けている秩序をもたらしてくれる」、と評価する向きがあった一方、トランプ大統領はそうした「きつめの手綱」をあまり好ましく思っていないとも伝えられた。
1月のVanity Fair誌では、トランプ大統領が友人に言った言葉として、「ここ(West Wing)には、自分が指揮官だと思い込んだもう1人の頭のおかしな人がいるよ!」が記されていた。

NPRは書いている。
「現政権の中にも、大統領の頭脳について、クエスチョン・マークを付けた人が何人もいる。たとえば、昨年10月、Rex Tillerson(国務長官)氏が、ペンタゴン(国防省)での興奮した会談の後に、大統領の事を「低能」(moron)と呼んだ」。

Tillerson氏は、後にそう発言したことは「否定しない」としつつ、「だからと言って、そんな些細なことで、辞めるようなことはしない!」と述べていた。
これに対しトランプ大統領はForbes誌に対し、「それもfake newsじゃないのか」と押し戻した後、「もし本当なら、Tillerson誌とIQテストを比べてみようじゃないか!」と言ったとされる。

トランプ大統領による恩赦

アメリカでは恩赦(Reprieves and Pardons)を与える権限は、連邦憲法(Ⅱ,2.末文)により大統領が有する特権の1つとされている。
アメリカの憲法史の文脈でいう特権とは、歴史的にイギリスの王が有してきたそれの事である。

NPR(5月25日)は、この恩赦権をトランプ大統領が使いこなす様を話題にしている。
1つは「巧みに」通じる表現である。
だが、その見方は以下のように1つだけではない。
彼が最近恩赦を与えた例として、かつてのヘビー級ボクサーJack Johnsonの事はこの欄で既に記した。
そこではNPRは、「大統領が16か月間で4つの恩赦を与えたとし、「それをhigh-profile casesで使っている」と評している。

NPRが言うのは、その結果、獄中にいる人らの間に、自分にも恩赦が与えられ易いようにと何らかの形で目立つ、メディアで話題になろうとする風潮が生じて来るのではないかと言う点である。
NPRは、そう推測している。

メディアとなれば、中でもトランプ大統領が良く見るのはFox Newsテレビだ。
だからFox Newsに載るように、獄中の人々が努力するようになるのでは、という。
「現に、この3月に元海軍兵士に恩赦を与えたが、それも「兵士がFox Newsに乗ってからだった」という。

次にNPRが言うのは、バラク・オバマ、G.W.ブッシュ、ビル・クリントンという前3人の大統領との比較である。
3人ともトランプ大統領のこれまでの在任期間(1年2月余り)では、1人の恩赦も与えていなかった。
ずっと以前は恩赦はもっと多く与えられていたものだが、この3人の大統領の時代にはとても慎重になって、任期の終わり近くにならないと出さなくなっていた。
中でもオバマ大統領は、最後の2年間に(粗暴犯ではない)麻薬犯罪者をターゲットにした恩赦作戦を考えて、実行した。

NPRはまた、トランプ大統領が恩赦を担当する「司法省の考えや、その恩赦規則に、余り捉われないで行動しているであろう」とも述べている。
司法省は一般的に、犯罪者に恩赦申立てをする前に、「5年は待て」と話しているという。
トランプ大統領がルールに捉らわれていないことは、死者であるJohnsonや、まだ判決も出していない元アリゾナ州のSheriff、Joe Arpaioに対し恩赦を出したことが示している。
トランプ大統領が死者であるJohnsonに対する恩赦を出すに至ったのには、俳優のシルベスター・スターローンが大統領に話したことがきっかけになった。

ある法律の先生は言う。
「これでは恩赦は、話題性の高さによって決まる、くじ運的なものになってしまう…」。

アメリカの外交(元外交官の証言)

トランプ大統領が、北朝鮮の金主席との会談(シンガポールで6月12日を予定)を「中止した」と一方的に宣言した次の日に、「予定通りやるかも…」と言い出すなど、NPR(5月27日)が言う通り、アメリカのみならず国際外交の道を大きく外れた動きになっている。

NPRが特に指摘するのが、彼がそうするについて、誰とも相談も、言葉を一切交わすこともなく、そうした点である。

NPRは2の句を次いで言っている。
「既に国務省の上層部では6割の人が辞めて行っている…」。
その上で、その1人、前パナマ大使だった(アメリカ海兵隊にもいたことのある)John Feeley氏にインタビューしている。

そのFeeley氏が、トランプ大統領に初めて会った時の話しである。
そこでFeeley氏が感じたのは、トランプ大統領が、周りから十分な「ご忠進」を受けていないのではないかと言う疑念である。
トランプ大統領が発した質問は、「パナマから、我々(アメリカ)が引き揚げるの、はどうだ?」であった。
そこでFeeley氏は、少し長くなったが、如何にパナマがアメリカにとっての大事な友邦であるかを説明した所、最後に「僕のあそこのホテルはどうだい?巧くやってるかな?」との質問が返ってきた。
その後、間もなくFeeley氏は大使を辞任した。

その次にNPRは、
「彼は、白亜紀に中国やシベリアにいた恐竜と同じだ。自分が親分じゃないと気が済まない。敬意を示さないと、相手を殺してしまう…それに似てないですか」、
「何十年も外交官をしてこられて、その間、政権も共和党、民主党と会ったりでしたが、アメリカの外交はどうでしたか、どんな考えで進めてきましたか」、
と質問している。

Feeley氏:
「それは難しい質問ですね、その問題は、本当に困難な問題です。
今、国務省のかなりの人々か辞めて行っているのも、それに絡んでいる。
国務省の生え抜きの人々は、とても愛国心の強い人達だ…彼らは「没政治」で、ひたすら大統領の意向を体して外交を進めようとしている(その旨の誓約書を提出している)。
しかし我々は、外交の真只中にいて、そこに生涯をかけている…多国語を喋り、そこの物事の専門家となっている。
ところが、現大統領の下では、殆んどそうした専門家との相談なしに、あの部屋の中から物事が決定されて出てくる。
今回の北朝鮮問題でもそうだ。
ついこの間、国務長官になったばかりのMike Pompeo氏が派遣されて、ちょこちょこと話してきた。
そこで、もう決定だ」。

NPRは更に「1人の人間が、それも身内の人だけの意見を聞いてラテン・アメリカ外交をする状況について」質問している。

Feeley氏:
「ラテンアメリカの国も、それなんですよ!それらの国の大臣とかよりも、弟とか、妻とかを知ってないと…そこら辺で、本当のことが決るから、アメリカでもケネディ一族はそれに近かったが、しかし、彼らはそれなりの能力があり、世間でも認めていた。
只今の問題は、メキシコに対する外交だ…大統領婿殿の若い両肩にかかっている。
無論、彼に専門家の知識なんて、ありはしない…悪い人じゃないが、そこには、もう30年もメキシコ外交に係っているRoberta Jacobsonがいる。
それなのに大統領が、メキシコ大統領と会う時に招かれない」。

Feeley氏はパナマ大使を辞めるについて、他の外交官のように「ひっそりと辞めて行く」行き方を採らなかった。
大統領宛に私的な手紙を出したのだが、それが意図的かどうかは不明だが、Reuterによって公けにされていた。
手紙のポイントは、その中で彼が「昔教わったこと」として
「政策としてどんなに反対であろうと、大統領の指示通り動くべきだが、最早、それができないと悟ったら、辞任しろ」と言うのであったとした点である
(なお、Feeley氏は、現在Univisionの解説者をしているという)。