ホワイトハウスにコンウェイあり

ホワイトハウスにはトランプ大統領を取巻く数十人の補佐官などがいる。
すべて大統領が、最高にこの国を収められるよう、細心の注意を払って自ら選んだ人達だ。
中でも、対メディアなど広報関係は大切だ。

更に政策面で大統領にとり重要なのが、助言者、参事、顧問などと訳される各種のCounselorである。
そこに女性のカウンセラーとしているのが、1967年生まれのコンウェイ(Kellyanne Conway)女史である。
ホワイトハウスの高級女性官僚として、大統領の代弁者として、注目される地位にいる。

ホワイトハウス内のトランプ大統領の取り巻きの間では、言うまでもなく24時間中、猛烈な競争が行われている。
そんなところへ加わるくらいだから、彼女も無論、只の人、一通りの女ではない。

政権発足から間もない2月初めまでに、彼女は大統領の大のお気に入り娘、長女イヴァンカに係る2つの発言をしている。
1回目はFox & Friendsとのインタビューで、イヴァンカのブランド品(靴など)を誉めそやし、推奨した時で(2月7日)、更にデパートのノルドストロムが「イヴァンカ・デザインの衣類の扱いを止める…」と発表したことに対し、
「あんな素敵な衣類を止めるなんて!皆さん!どうぞ行って、お買い求め下さい!私も持っていますが、素敵!…私は、ここでただのコマーシャルをやってしまいます!」
と言った具合である。

さすがアメリカのことである。
数時間しないうちに2つの市民団体が、連邦政府の公的倫理局(OGE)に対し、彼女に対する苦情を申立て、一種の訴えを起こしてきた。
「公職を私利のために利用することを禁じた連邦の規則に反した」、との申立である。

その中で、「これは、トランプ一家の人々が皆、公職の意味に対する認識が不足していて、中でも、利益相反に対する感覚が鈍いことを示している…」とし、コンウェイ女史自らが、「コマーシャルをやってしまいます…」
と言ったことが示すとおり、「うっかり違反してしまった」、とかいう問題ではなく、故意による法規違反であると、争う余地がない。

この問題では、アメリカでの有名な憲法学者、ハーバード大学ロースクールのトライブ教授も、
「私人としての大統領(の娘)についての、いわば歩く広告塔の役割を果たした…これ以上の明白な違反行為はない…」
とし、更に「イヴァンカ、つまり大統領一族を、より富ませようとのむき出しの行為をやったものだ」、とニューヨークタイムズに対し述べていた。

これらの事実から見えてくるのは、このコンウェイ女史のなりふり構わぬ出世欲である。
ゴマすりなんぞ全く気に停めない。
「みっともない」などというセンスはゼロである(元々アメリカ社会は、日本社会と比べると、そういう要素に乏しいが)。

2016年大統領選挙でもコンウェイ女史は、初めクルス氏をサポートし、彼の政治団体「第1約束を守る会」の会長に就いていて(なお、この会を資金的に100%近く支えていたのが、アメリカでも1,2を争う富豪マーサー(Robert Mercer)氏である)、トランプ候補を激しく攻撃していた。
「なに、あの主張は?過激なだけで、ちっとも保守じゃない!」。

更に1月25日には、「あの男は、自らの指名を妨げるような真似をしているわね!」と呟いたかと思ったら
1月26日には、「トランプ候補の言う公用収用は、要するに貧しいテナントをブルドーザーで情け容赦なく追い出すことじゃない!」と、非難していた。

さて、そんな彼女は、ニューヨーク州のお隣、ニュージャージー州生まれで、父方はアイルランド系で、小さな運送会社を経営。
母方はイタリア系の血筋で、銀行で働いていたが、2人は、彼女が3歳の時、離婚している(彼女は母方に引き取られた)。
子供の頃から向こう気が強く、いじめに遭っている従兄弟を救ったり、チアリーダーをやったり、祭りの山車に乗ったりしていたという。
その後は専らブルーベリー畑でのブルーベリー採りのバイトで働いたこと、その方面の腕前が自慢で、16歳の時、賞をとっている。
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トランプ氏とロシア問題

トランプ氏がバノン氏を雇っていることは、よく知られていよう。
現在はホワイトハウスの主席戦略官だが、選挙期間中は、トランプ氏のキャンペーン隊長でもあった。
ホワイトハウス入りするまでの彼は、人種差別的なコメントを発信するメディア、ブライトバート・ニュースのCEOである。

トランプ氏は共和党の穏健派を抑えつつ、選挙戦の正面の敵である民主党のヒラリー・クリントン氏を徹底的に叩くことを行った。それにより、中でも、落ちぶれた中高年の白人労働者らを巧く引き付けられた。

ニューヨークタイムズは、バノン氏と相前後してやはりもう1人のメディア界での右翼男が、トランプ氏によって抱えられた、と報じていた(2016年8月18日)。
それが、フォックス・ニューズの前CEOアイルズ(Roger Ailes)氏である。
アイルズ氏と言えば、会社のアナウンサーなど何人もの女性にモーションをかけたことなどで、当時アメリカのメディアを沸かせていた(その後退社し2017年5月に亡くなっている)。

このように右翼のメディア界の代表格2人を揃えることで、トランプ氏のキャンペーンは人種差別色を強めたうえ、共和党の「権威者(エスタブリッシュメント)」、とされる穏健派を攻撃する雑言を、賑々しくまき散らす結果となったと言える。

選挙期間中にもう1人、トランプ氏が雇ったのが、マナフォルト(Paul Manafort)氏であったが、どうやら彼は、バノン氏とコンウェイ女史の強力な2人組によって、期間中は干上がってしまっていたようである。

ところで、マナフォルト氏とは誰か?
この質問に一言で答える言葉としては、「ワシントン・インサイダー」が適切であろう。

彼は先ず、弁護士、国際ロビィスト、色々な人のキャンペーン・マネージャー、政治コンサルタントなどをやってきた。
ワシントンにわんさといる、この手の人の1人だ。前記のロビィスト活動のために、2回(別のパートナーらと)事務所を立ち上げている。
中でも、2016年のトランプ氏による大統領選挙のキャンペーン・マネージャーを勤めた。
その前はと言えば、フォード大統領、レーガン大統領、H.W.ブッシュ(父の方の)大統領、およびドール(Bob Dole)氏の助言者を勤めた。

そんな中での彼の特徴は、外国政府などのための、ここアメリカ、ワシントンでのロビィング活動を多く手掛けてきたことだ。
その中には、フィリピンのマルコス(Ferdinand Marcos)や、ザイール(コンゴ共和国)のセコ(Mobutu Sese Seko)や、その他ゲリラ・リーダーなどのためのロビィング活動もある。
特に彼が強かったのが、ウクライナの親ロシアの大統領のヤヌコビッチのためのロビィングで、その点で有名と言うか、大いに名前も売ったし、批判も浴びていた。
アメリカが、今日の世界の政治・経済の中心であることから、以上のような「国際ロビィスト」としての存在も生じてくる。

このように、外国政府などのためにロビィング活動をするには、そのための法律に従い、登録が必要となるが、マナフォルトは、まだ登録前にも活動したことで更に批判された。
上記のウクライナ絡みのロビィングで彼は、2014年にFBIによる調査を受けている [1]。

何しろ、必ずしも民主的で公開された政治の場ばかりではない、外国政府のための活動を主としてきた彼のことだ。
外国人から貰ったいろんな金銭の受け渡しが、「ザクザク」という感じで、報じられている。

さて、ウクライナの現政権は、2014年の政変によりポロシェンコ(Petro Poroshenko)氏に変ったが、マナフォルトが働いていたのは、その前任でロシアのプーチン政権に近かった、ヤヌコビッチ氏のためであった。
2004年から2010年の間、ずっとこのヤヌコビッチ氏と、彼の率いるウクライナ地域政党の助言者として行為していた。
プーチン政権に近いということで、アメリカでは、たとえば議会上院のマケイン氏などは、このマナフォルト氏の動きを非難していた。

彼は、トランプ氏のキャンペーン・マネージャーに6月に就任していたが、8月に、このヤヌコビッチ氏との関係が大きく報じられると、8月19日にはマナフォルト氏は辞任を申し出た。
その2日前の8月16日には、彼自身のメモで、「ずっとキャンペーン・マネージャーに留る…」式の言明をしていたが。

そうしたマナフォルト氏が、トランプ大統領の選挙に、ロシアが係った件に関して、議会上院・司法委員会に、大統領の息子らとともに出てくるよう呼ばれていた。
ところが、マナフォルト氏の弁護士は上院司法委員会と交渉して、出席に代えて調査についての一定の協力を約束することで、一件落着したという。

NPRは司法委員長の話しを伝えるが(7月26日)、それによると、トランプ大統領のいわゆるロシアとの一連のやりとり(ロシア疑惑)では、やはりマナフォルト氏が中心人物であるという。

このロシアの問題では、目下もう1人、トランプ大統領の下で大きくその進退問題がクローズアップされている人がいる。
司法長官セッションズ氏だ。
長官就任第1日目に、「自分はロシア問題には係らない…」と、いわばロシア問題を忌避していたが、それがトランプ大統領の癇に障っていた。
それにより特別検察官モラー(Robert Moeller)氏の選任が必要となったとの見方も、それを支えている。
怒ったトランプ大統領は、よほど頭に来ていたのであろう。7月25日レバノン首相が来米して、共同記者会見をしている席で、「彼は、もうどうにもならない(beleaguered…)」と呟いていた。

これにつきNPRは、共和党との結びつきからしても、「もうどうにもならない」のは、むしろ大統領の方ではないか、と述べている。
共和党は、セッションズ氏の擁護に廻っているという。








[1] Foreign Agents Registration Act of 1938、同法の下での登録では、2007年現在で、約1700の国際ロビィストが存在し、100ヶ国以上のために働いている。

2018年中間選挙

トランプ大統領の支持率の低さが、ずっと指摘されてきている。

アメリカでの代表政治では、4年毎の選挙の他、その間(2年毎)の中間選挙がある。
来年2018年11月6日もそれである。そこでは下院の全議席435と、上院の3分の1に当る33の議席を巡って争われる。
この他、州以下の知事や議員の選挙も併せて行われる。

そこでNPRは、この処パッとしなかった民主党がどういう成績を示すか、ABCニュース/ワシントンポストによる調査を引いて、記している(7月24日)。
それによると、民主党は共和党に対し14%のリードを示した。
5月以来の調査で、民主党はこうした2桁のリードを多く示してきている [1]。

過去のデータによれば、2006年、2008年の調査で、民主党が平均9%強のリードを保っていた時は、下院でそれぞれ30名と23名のリードを記録している。
今の下院の状況からすると、民主党が下院で多数をとるためには、24のリードを確保する必要がある。

もう1つ2018年選挙を占う上で民主党にとりプラス材料となるのが、一般に、中間選挙では大統領の与党が負けているという統計である [2]。
たとえば、オバマ大統領時代の2010年、2014年中間選挙では、共和党に対し各63と13名の負けを記録している。

アメリカでは各選挙区毎の分析が進んでいて、435の選挙区を、最も民主党に傾いた選挙区から最も共和党まで、順次並べることが出来ているらしく、その中間の選挙区(218番目の選挙区)が特定され、それが1つの推定材料とされうる。
NPRは、この中間区の値は、全国値以上に共和党寄りの数値が出る傾向があるとしている(過去4回の大統領選挙)。
2004、2008、2012、2016の各年では、それが、やや共和党寄りであったことが判っている。
たとえば、2016年選挙では、その中間区はアイオワ州の第1区であったが、そこではトランプ氏が3.8%上回っていた。
全国的にはクリントン氏が2.2%上回っていたから、3.8+2.2で、アイオワ州第1区は、全国的傾向より6%共和党寄りになっていることが判る。

以上からすると、2018年選挙では「民主党有利」の予想が立てられそうであるが、もう1つ勘定に入れなければならない要因がある。
それは、「現政権のもつ優位」(benefits of incumbency)である。
何といっても、現に当局者であることは、名前を売るにしろ、資金を集めるにしろ、何かしら有利である。

更に考えられるのが、只今から2018年選挙の日までに、15,6ヶ月前の期間があり、その間の変動がありうる点である。
2013年の7月ごろも、民主党は、3.5%のリードを予測できていたが、2014年の選挙日には、逆に共和党に2.4%負ける形となり…その結果、13議席負けるという変化が生じている。

しかし一方で、トランプ氏のサポーターらの圧倒的多く(72%)が、2018年選挙では、「必ず投票に行く」と言っている。
従って、上記のような調査にも拘らず、問題は、それら「民主党支持者のうちの何人が、実際に投票に行くか?」、に大きくかかっているという。





[1] ある機関(Real Clear Politics)によると、平均で9%リードの結果があると、過去のデータから推論して、下院でのリードが可能とされるという。

[2] 1934年以来の中間選挙統計で、大統領の与党が勝ったのは、3回のみという棒グラフの記録を示している。それも、僅勝ばかりである。

NAACP会長の選挙

エヌ・ダブリュー・エー・シー・ピー(NAACP)。
アメリカで最古の黒人らのための全国組織である(全国で50万人以上がメンバーに登録しているという)。
1909年にニューヨークで作られ、その元を辿ると1905年の「ナイアガラ運動」に至る [1]。

NAACPは設立以来、黒人らの人権回復のための闘争を、その中心を、「法廷での勝利」に置いてきた。
そのために、何百と言う最高裁判決を勝ち取ってきた。
アメリカの公民権運動史を語るうえで、NAACPが、更に、その別働隊となったNAACPのLDFが、果たした大きな役割に触れないわけには行かない。

そのNAACPが、メリーランド州の古都ボルチモアで年次の全国大会を開いている。
トランプ大統領をゲスト・スピーカーとして招いたが、大統領により断られている。
実は、去年(選挙中)も招いていたが、同じく断られていた(オバマ、G.W.ブッシュ大統領は、共に出席して喋っている)。

ホワイトハウスは、今年の断りにつき、「NAACPとの対話は行ないたい」とは付言している。
これに対しNAACPの会長も、「応じる」、と声明したものの、「現政権には、黒人らの声に耳を傾けようとする意欲を感じられない…」とも付言している。

このNAACPの今年の主な議題として上っているのは、
(ⅰ)黒人らの投票権、
(ⅱ)警察の対応、そして
(ⅲ)トランプ政権の出方と、それへの対応である。
無論、会員の増強問題は常に最優先課題として存在する(殊に21~35歳の若手会員の増強に力を入れている)。
また、全国大会での行事の1つとして、NAACPの新会長(president, CEO)選出の問題もある。

この問題につき、全国大会の議長は、今年末までに選出を行うとし、今回のボルチモアでは、仮のCEOとして、ジョンソン(Derrick Johnson)氏が選ばれた。
NPRによれば、この108年の歴史のある最大の公民権団体の臨時の代表となるジョンソン氏は、ミシシッピ州が地元で、現在同州NAACP会長をしていた。







[1] ナイアガラ運動が、アメリカの南部州での取戻し期の間に失われた黒人らの自由と人権回復の運動の切っ掛けとなるが、そこには、中心となるW.E.B. DuBois、aWilliam M. Totterなどが、今1人の黒人の先覚者(だが、妥協的な)ブーカー・ワシントンと鋭く対立する契機があった。なお、このワシントンがリードした団体National Afro-American Councilは、1898年と早いが、1907年に終わっている。

ホワイトハウスの新しい広報部長

トランプ大統領とメディアとの刺々しい関係の例として、それにプラスしてCNN記者の早とちりが絡んで、記者ら3人が辞任の破目に追込まれた話と、彼のツイッタ―に係るものとを、この欄で採り上げた。

ホワイトハウスの広報部長として、トランプ大統領がそのメディアとの接点に立ててきたのが、シーン・スパイサー(Sean Spicer)氏であったが、就任から丁度6ヶ月の7月20日にトランプ大統領に辞表を出して辞めてしまった。
この6ヶ月という前例のない短かさの辞任劇の理由も明確ではない。

トランプ大統領との関係も波立っていたことは、その2,3日前の大統領によるスパイサー氏批判から見て取れる。
一方、メディア関係人事が、その理由になったとみることも説得力がある。
スパイサー氏が、その任命に反対していたスカラムッチ(Anthony Scaramucci)氏を、トランプ氏が広報部長として新たに任命したことに立腹したとの見方である。

NPRも、この見方を記している(7月22日)。
この絡みでホワイトハウスは、7月21日夕方にメディア向けに次の説明を流したとしている。
「今後はスカラムッチ氏が、広報全体を、その内容だけではなく、戦術の点まで取り仕切る…」。

そのうえでNPRは、スカラムッチ氏の横顔につき、次のように紹介している。
ハーバード大学ロースクール出身で、現在53歳だが、法律とはあまり関係ない。
自らヘッジファンドを運用するなど、専らウォールストリートの人間として、色々やってきた人である(そう言った絡みの本も、3冊書いている)。

NPRのいう彼の横顔を読むと、口先の巧いセールス・トークの達者な人で、かなりの社交家、派手好みの人に見える。
父がイタリア系アメリカ人で建設業の彼は、ニューヨーク州ロングアイランド生れで、その派手な流行りの服装から、少年時代の友人らやG.W.ブッシュ大統領からは、グッチ・スカラムッチ(Gucci Scaramucci)の仇名で呼ばれていた。

初めてお金を稼いだのが、叔父の店のオートバイを何台か売った時で、ハーバード時代を含め、くり返し自慢らしく、その時のことを人に話していたという。
また、2016年の大統領選挙の早い時期から、資金集めに奔走するなど、彼トランプ大統領への肩入れも積極的に行ってきており、「機を見るに敏な人」という感じである。

トランプ氏が政権に就いてからの恩賞人事では、間合いが悪く、腰掛け人事のような輸銀(Exim Bank)副総裁に就任したりしていたが(OECD大使などにも擬わせられかけていたが)、今回やっとホワイトハウスの上層部に納まった。
2016年大統領選では、トランプ氏を熱烈に支えたスカラムッチ氏だが、過去に遡ると、以前はツイッタ―に反対のことを書いていていて [1]、
「必ずしもそうではない…」とNPRは言う。

それを、今やインターネット上で消し込んでいると、自らツイートしている。
彼の主張は、環境保護派、銃社会反対、同性愛なども容認、といった具合に、概して進歩的である。
スカラムッチ氏とCNNとの間のゴタゴタは前に記したが、その件でのスカラムッチ氏のCNNの記者らに対する大人びた態度にトランプ大統領が感心したことも、彼を今回ホワイトハウスに入れたことにプラスしているという。








[1] その1つとして、2015年12月には、「メキシコとの壁なんて意味がない…何の役にも立たない…」と書いていた。

アメリカの人口動態

2017年4月のアトランティック誌は、人口統計局の資料をもとに、アメリカ人の(州から州への)移動などについて記している。
そして、警告とも嘆き節ともとれかねない声を挙げている。
「ニューヨーク市から、そしてアメリカの大都市から、人が流出している」というのだ。

ニューヨーク市のメロト地区(中心区)から2010年以来、百万近い人が流出したという。
もっとも、同じ期間に外国から85万人が流入したというから、ネットでは、それほど驚くに当らない [1]。

一方、アメリカ以外の国からアメリカを目指す人。彼らは難民も含めて、先ずニューヨークを目がけてやってくる。
その数は、後を絶たないという。

同誌は、まず初めのニューヨーク市脱出の方の理由として、「金がかかる」、「ゴタゴタ!」、「緑がない」などを挙げている。
いずれも心地よい生活を夢見る中流階級の家庭にとって、好ましくないことだ。
それでも、この喧噪の街を目がけてやってくる人々がいる、一流大卒のいわゆる「ミレニアルズ」達だ(単身ではないが、まだ子供はいない、上昇志向の強いカップルらだ)。

そのうえで同誌は、アメリカ合衆国全体の人口動態について、大局的にこう言っている。アメリカの大都市人口は、この5年で、ずっと下り坂を示している。
それ以外では、アメリカ合衆国全体では緩やかな人口の放散が続いている。
その放散の行く先は、“sunny suburbs”、中でも「南東部州の郊外」という訳である。

1990年代から2000年にかけて、例の住宅バブルがあった(サブプライム)。
この時期の郊外の持家ブームが潰れた後、一時的に、部分的に(郊外から大都市部への)逆の流れが見られた。
しかし、この逆の揺れ戻しは、大きな流れとはならなかった。直にまた郊外へと、それも一段と人口の少ない郊外へと向かう流れが、目立つようになった。

このサニー・サバーブで指さす方向は、同じ南でも、かつての南西方向(つまり西部や中部アメリカ)ではない。
今の流行りは、南東方向である。
殊に2016年の全米ベースで最も人口の伸びの大きい10都市のうち、7都市がノースとサウスの両カロライナとフロリダ州内にある。

以上のように、アトランティック誌は、ニューヨーク市などへの人口の流出入の激しさの中で、大都市人口の伸び悩みと、サニー・サバーブへの人々の徐々の移転を指摘していた。
2008年の金融大不況後に、この流れは一旦逆になるが、そこでのニューヨークなどの人口の戻りが、それほどでもなかった今一つの理由として、ガソリンの価格が、一旦値上がりしたことなども挙げている。

郊外への移転の流れは、単に住宅の面だけではない。
車種別の車の売れ行きにも表れた、と同誌は指摘する。
即ち、セダンの代表フォード車よりも、ピックアップの方が延びているという。
GMについても、トラックやSUV (crossover)などであるという  [2]。

一方、人口統計局の発表では、2013年から2014年にかけての1年間での10大人口増都市のうち、5都市がテキサス州にあるとしている [3]。
つまり、テキサス州(Lone Star State)が、州全体として何といっても、全米50州中で一番勢いが良い。








[1] なお、この85万人の流入は、合衆国の中ではマイアミ、ロサンゼルス、サンフランシスコのいずれよりも多く、最大であるという。

[2] 同誌ではさらに、こうした郊外への移転の流れにつき、アメリカ人一般に住宅についての閉鎖恐怖症があるのかもしれない、と述べている。

[3] Houston, Austin, San Antonio, Dallas, Fort Worthの5都市である。また統計局は、カリフォルニア州も、百万都市を今や3つ抱えているとしている(ロサンゼルス、サンディエゴ、サンノゼ)(census.gov)。

トランプ大統領とウクライナ問題

アメリカとロシア。この世界の2強、核大国の間柄がどうなのか。
これは、暇人の「当てもの」どころではない。つい先日も、トランプ大統領とプーチン大統領とが初めて面談したが、かつトランプ大統領は、会談につき肯定的コメントをしていたが、簡単に一言で、どちらかに片付けられるような問題でないことだけは確かである。

ところで、この米ロの間柄が、仮にも「改善に向かう…」などのニュースが正しいとしたら、それで大いに悲しみ、落胆し、衝撃を受ける国と人がいる。
たとえばウクライナであり、ポロシェンコ大統領である。
NPRは、そのポロシェンコ大統領が、一種の「招かれざる客」としてワシントンを訪問したことを伝えていた [1]。

ポロシェンコ大統領の公けのツイッターでは、
「トランプ大統領が、7月にプーチン大統領とハンブルグでのG-20の場で面談するより前に、会っておくことが肝心」
としていた。
結局、ポロシェンコ大統領はペンス副大統領と会談。
NPRは、トランプ大統領とは、ホワイトハウス内で写真に収まる程度と記している。

そこでのトランプ大統領の外交辞令として伝えているのは、
「ウクライナというのは、アメリカも、とても係ってきた処で…人々が色々、我々もそうだが、見たり、聞いたりしている…」
と言ったものであった。

一方のポロシェンコ大統領の方は、「アメリカは、ウクライナにとって最も頼りになるパートナー…」式の応答をしていたが、NPRは、元ウクライナ駐在のアメリカ大使との対談を通して、この言辞はウクライナ人らがトランプ政治を見ている見方とは違うんじゃないかとして、トランプ大統領の「ロシアによるクリミヤの併合を承認してもよい」、かのような口振りを伝えている。

しかもティラーソン国務長官も、6月下旬、議会で東ウクライナを巡る国際和平交渉案、いわゆる「ミンスク合意」に「拘らない」かのような発言をして、議員らをびっくりさせていた。







[1] 「赤絨毯を拡げていたとは確言できない…」としている。また忙しく纏められたスケジュールによる訪問の目的として、東ウクライナでの内戦につき説明するため、としている。

ニクソン夫人に褒められたトランプ氏

3月15日のワシントンポスト紙は、トランプ氏について、もう2人別の政治家との間で、強い類似性を有すると指摘している。

1人は、1960年代にかけてアラバマ州の知事をしていた人種分離主義者のウォレス(George Wallace)氏。
もう1人は、例のウォーターゲート事件でアメリカの歴史で唯一、大統領を辞任した(せざるを得なかった)リチャード・ニクソン氏である。

ウォレス氏との共通的として、記者が挙げている2,3の点を先ず紹介すると、荒っぽい言葉遣い(rough language)、反対者への脅し(threats against protesters)、反メディア(antipathy toward the press)の言葉がある。

ワシントンポスト紙はここで、歴史家ブリンクリィ(Douglas Brinkley)氏を登場させている。
彼は先ず、トランプ氏とウォレス氏との間の共通点として、ウォレス氏の口調をそっくり真似て言っている(当時のテープをそのまま流しても大丈夫としている)。
「奴らを放り出せ(Get’em outta here! Throw’em out)」。
そのうえで、トランプ氏が似ている人として、更にニクソン氏を挙げている。

「具体的にはどんな点が?」との質問に対して(彼のテープNixon tapesをすべて聞いた、としながら)、
「敵のリストアップ、誰がニクソンを軽んじたかを記録、直ぐに奴らをやっつけろ的な態度、目には目を、歯には歯をだ!ニクソンは、とても能力があって、2回大統領選で勝利しているが、その暗黒面だ…」。
こう述べつつBrinkley氏は、トランプ氏にそれと同じ程度の能力があるか、「その証しは見ていない」、としている。

その上で彼は、ニクソン氏とトランプ氏との間の隠れたもう1つの逸話を語っている。
それは、1987年12月というから、トランプタワー竣工から4年以上たち、しかもテレビのショーに出るなどでトランプ氏が盛んに己の名を売っていた時である。
この昼間の番組では、トランプ氏が「何がアメリカをダメにしているか、どうしたらそれを直せるか!」について語っていた(nytimes.com)。
その時テレビ(“Phil Donahue Show”)を見たニクソン夫人が、夫に言った言葉、「この人は、きっと偉くなるわよ!」。
それが働いた。

ニクソン氏は早速、筆を執った。
その結果が、12月21日付の手紙で、「ニクソン大統領図書館」にずっと眠っていたが、2015年トランプ氏の伝記のため白日を浴びることになった。
この手紙が、そしてその再発掘が、トランプ氏の大統領を目指す内なる声を励まし、一段と勢い付けたことは間違いない。

手紙で、ニクソン氏は書いていた。
「…私が見た訳ではありませんが、お判りでしょうが、妻は政治のエキスパートですが、その彼女が見ていて、とても強い印象を受けたそうです。貴殿がもし選挙に出られたら、きっと勝利し、当選されるでしょう…と」
(実は、この後トランプ氏は、ニクソン夫妻の依頼を受けて、マンハッタンのアパートを仲介している)。

公共への信頼

建国241年の記念日(7月4日)を控えて、アメリカ社会での人々の礼儀(正しさ)について、NPRが調査をしている(7月3日NPR/PBS poll)。

答えはあまり芳しくない。
10人中7人が、トランプ大統領になってから首都ワシントンでの人々の礼儀の程度が「悪化した」(gotten worse)と答えている。
「良くなった」は6%。同じ程度が20%。
うち民主党員だけを採ると、10人に8人が「悪化した」となる。

対比して、オバマ政権の発足年(2009年)でのギャラップ社による調査では、35%が(人々の礼儀が)「下った」と答えた一方、21%が「良くなった」と答えていた。

もう1つNPRが調査しているのが、アメリカ人の公共機関に対する、中でもアメリカ建国の背骨となる諸機関、連邦議会、司法機関、大統領府(トランプ・ホワイトハウス)、法の執行機関などに対する人々の信頼についてである(とても信頼、まあまあ信頼、など4段階に分けている)。

それによると、一番信頼が高かったのが、この欄でも2,3回採り上げているアメリカの諜報機関(FBI、NSA、CIAなど)に対する信頼で、上から2つ合わせて60%ある。
次が法廷、つまり司法機関で、やはり60%である。
次が、選挙制度に対するもので50%、
与論調査機関の46%、
トランプ・ホワイトハウスの37%、
連邦議会の29%、
メディアの30%と続く。

NPRは、上記の信頼度の数字が人々一般であるのに対し、更に共和、民主の党派別にも、これらの数字を出している。
そのうち、トランプ大統領との関係が刺々しくなっているメディアについての信頼度の分析を見ると、全体の30%に対し、民主党が56%(「とても信頼」が16%、「かなり信頼」が40%)なのに対し、共和党では9%(4%、5%)と、驚くほど低い。

トランプ大統領に対する信頼度は、人々一般では37%であったが、これが民主党だけをとると、69%が「全く信頼しない」となる。
一方共和党では、47%が「まあまあ」で、37%が「とても」信頼するとなっている。

この他で、興味深かった質問と、それに対する回答を挙げると、「政府に対する抗議権」についてがある。
共和党支持者の41%が、この「政府に対する抗議権」が「拡げられすぎ」(expended too much)と答えている一方、民主党支持者になると、これが7%と激減しているからである(更に民主党員の44%は、投票権が「制約され過ぎている」としている)。

アメリカ人一般の懸念すること

アメリカが人種社会であることに関して、何回か採り上げてきた。
その他アメリカの人種問題では、人種問題を懸念する人の割合の変化(2014年の17%が2017年に42%へと急上昇したことについてなど。

ギャラップ社でも無論、この人種問題に関して時折調査して採り上げている。
2014年11月の調査では、「今アメリカで、何が一番大変な問題と思うか?」、とアメリカ人一般に対して訊ね、その集計を公表している。その同じ質問に対する答えを、6年毎にグラフにして表わしている。

それによると、「人種問題」が一番大変な問題だとした人の割合が、1972年以来ずっと3,4%以上に上ったことがなかったところ、1992年に15%、近年では2014年に13%に、それぞれ上っている。
このパーセントというのは、他の問題としての上位3つ、ワシントンの政府の問題、アメリカ経済、失業問題と並ぶ4項目と、その他の項目とを併せて11項目を、100とした中での比率のようである。

因みに、2014年の6~12月の各月の調査では、ワシントンの合衆国政府の問題が上下しつつも、大体1位の20%弱のウェイトを占め、次がアメリカ経済、3位が失業問題であったが、12月になって、上記のように人種問題が13%へと急上昇している。

長期にわたる大きな波としては、1954年、1960年、1966年、1972年の、6年毎、18年間の波動が最も激しかった。
その間の1963,4年にかけて、52%のピークがあったほか、1968年頃にも35%、また1958年に29%の大きなうねりが見られる。

この期間、つまり「ブラウン対教育委員会」の件での最高裁判決があった1954年から1963,4年にかけては、公民権運動が最も燃え盛った時期であった。
更に1968年には、公民権運動の中心人物の1人、キング牧師が、メンフィスで同市の(殆んど黒人ばかりの)清掃事業員の待遇改善運動のため訪れていたところを、暗殺されている。
これらが、上記の大きなうねりに対する理由として働いていた。

1992年に15%と、そこだけ突出して上ったのは、例の黒人のロドニ・キング(タクシー運転手)が、白人警官らによって集団暴行された事件による。
事件は2年前であったが、その年に、白人だけの陪審員が無罪評決を出していた。

一方、2014年にもピンと跳ね上っているのは、やはり警官による黒人への暴行・殺人事件が響いていると言ってよい [1]。
以上、アメリカ社会全体が人種問題に対し警報を鳴らしている、その印しとして人種問題を、この国が直面する最大問題(most important problem)だとする人々の率が、ピッ!と急上昇した点について記した。

ギャラップ社は逆の方向から見た、つまり非白人らが白人警察官をどの程度信頼しているか、彼らの道義心に対し信頼しているか、それを調べたものも公表している。
即ち、白人の60%が肯定的なのに対し、非白人の場合、49%しか肯定的な評価を下していないという(2014年11月17日)。
また、警察官の道義心については、白人の59%が肯定的な評価を下していたのに対し、非白人の場合、23%のみが、肯定的な回答をしたとしている(2014年12月18日)。

ギャラップ社が目下のところ懸念していることは、この2014年の急上昇(13%)が、1992年の時に15%と、その年だけ飛び抜けて上ったのと同じように一過性で終わるのか、それとも(公民権運動が盛り上がった)1950、60年代のように、高波として持続するのか、という点である。

この懸念に対する答えが、早速出された。ギャラップ社による2016年7月の調査による。
それによると、18%のアメリカ人が人種問題をこの国が直面する最重要な問題だと回答している。
2014年の13%から一旦一桁台に下っていたが、再び上昇してきた。

2位が政府に対する不満で16%、
3位が経済全体に対する懸念で12%、
4位が失業問題の7%、
次いで犯罪に対する懸念で6%、
人倫の低下に対する懸念で6%、
不法移民問題に対する懸念で6%、
国防問題に対する懸念で6%、
テロ対策に対する懸念で5%、
銃の問題5%、選挙制度の問題5%、

となっている。





[1] ミズーリ州ファーガソンで、Michael Brownという青年が警察によって殺された(2014年8月15日)。その前7月17日には、ニューヨーク州スタッテンアイランドで、Eric Garnerという青年が、同じく警察によって殺されていた。いずれの事件でも、警察官は起訴されることがなかった。

Twitterについて

トランプ氏は、何しろ異色、奇抜である。
不動産デベロッパーからスタートして、カジノなど、色々なことを手掛けてきた。
その彼の大統領として一番奇抜な手法と言えば、TwitterでTweetする(「ピヨピヨ」と囀る、が本来の意味)があろう。

何も大統領になってから始めた訳ではない。
1990年代の中頃、まだ不動産デベロッパーに専念している頃から、つまりアメリカでのインターネット時代とともに、略同時にやってきたことではないか。
そのアカウントは、@realDonaldである(73)。
これがトランプ氏の個人用のアカウントであるのに対し、他に、大統領職に絡んだアカウントとして、
@POTUS(42)、
@WhiteHouse(55)、
@VP(副大統領マイク・ペンス氏用)(70)、
@PressSec(45)
というのがある。

NPRは、これらのツイッタ―アカウントが、6月26~7月3日の一週間で、各何回、何について発信したか、それを一覧図にして知らせている(その中の回数が、上記のカッコ内に記した数字によって示される)。

ここでNPRが言いたいことは、トランプ氏のツイート73回中、メディアへの攻撃、それとの言い争い的な物が、20回にも上ったということであろう。
その中には、彼が自らが興業主となったプロレスの試合のリング脇で撮ったと見られる、顔面に「CNN」の板を付けた男を殴り倒しているツイートも含まれている。
他の@のツイートには、メディアについて触れたものはない。
@POTUSが、上記の@realDonaldのツイート(プロレスのリング脇での乱闘)を再ツイートした1回のみである。

反対に、副大統領マイク・ペンス氏用の@VPでは、うち15回もが、上院で審議中の目下の最大重要政策となる健康保険法についてツイートしたものであった。
またホワイトハウスの(報道担当)補佐官のアカウントである@PressSecなどでは、移民問題(不法入国者)の問題に17回と、重点の置き所が少し別になっているほか、目下、上院で審議中の(下院は可決)アメリカから一旦出国処分となった後に、違法に再入国をした人への罰則を強化する法案、いわゆる「聖域都市」と称して、不法入国者に対しても略しようとする都市への、連邦の補助金をカットする法案、などについてのものが上っている。

アメリカの大統領選挙結果の正しさ

トランプ氏が大統領選挙で「不正が行われた」、「実在しない2~3百万の票が投ぜられた」式の発言をしていたことは、まだ耳に新しい。
彼が言うことに何らかの根拠を与えるものがあるか?それが、いわゆるmotor voter lawと呼ばれる法律である [1]。

この問題では、トランプ氏の下のホワイトハウス内に選挙人委員会も設けられ、また司法省の公民権局も動き出したという。
この辺りの問題につきNPRは、公民権運動家、選挙人委員会の事務局長になったカンザス州の長官、元司法省のお役人、選挙制度研究所の人、の4人とのインタビューをしている(7月7日)。

その中から、目に付いたものを拾うと、先ず公民権運動家は、
「司法省としては、できるだけ多くの選挙人が登録されるよう希望すべきなのに、この法律によって、本来選挙人として登録されるべきでない人が入っていないか、その発見と除去の方に力を入れている…」、
と懸念を表明している。

一方、選挙人委員会事務局長になったカンザス州の長官は、
「この2百万人の中には、その後、州内に住居のなくなった人とか、中には死亡した人も入っているだろう…」、
と述べているが、それに対して公民権運動家の方は、そうした「ぶつける作業」自体が、いい加減に行なわれているのではないか…カンザス州の長官自身が、トランプ大統領の同調者であり、その人が選挙人の登録が、「不当に膨らんでいる」との考えである。

更に、元司法省のお役人は、運転免許証の申請の時に「州内に住居があるか」の項目に対しNoとマークした人でも、その申請により登録されてしまう可能性がある…を指摘している(NPRは、それも悪意ではなく、うっかりミスでそうなるとしている)。

トランプ大統領は、ピュー研究所がこうした誤申請について報じていたことから、これを問題視し、ホワイトハウス内に選挙人委員会を設ける結果につながった。
ただしトランプ大統領は、そういう人達も、「投票に行っている…」と単純に主張していたのに対し、選挙制度研究所の人は、かなり広く調べてみたが、多くの場合「彼らは、投票には行っていない…」との結論だという。
今のところ、ホワイトハウス内選挙人員会も、調べた結果の結論がどう出るか、「見当がつかない」と言っている。





[1] 俗称であって、正しくはNational Voter Rigistration Act of 1993, 52 U.S.C.20501~20511であって、運転免許証の申請のときに 選挙人登録も可能とするように州に求める内容の法律。一旦登録されると、州が抹消しにくくするように工夫されている。

アメリカの国務省予算

民間人トランプ大統領のこれまでの大統領との大きな違い。
「冗費を削る…」も、多分その1つであろう。

NPRは、国務省に2011年から2017年までいたという中堅の人、バーグマン(Max Bergman)氏とのインタビューを載せている。
国務省の予算と、その活動について、その人が雑誌Politioに投稿したものをベースとして、質問している(7月5日)。

雑誌では、今、ティラーソン長官の下、「国務省の解体」が始っているという。
具体的に言うと、猛烈な首切りが行われているということである。
バーグマン氏は、それも国務省のケースは、普通とは違い、3分の1、2000人が失業する予定だという [1]。

しかも、と彼は付け加えた。
「それが、オバマ大統領時代の6年に及ぶ予算の削減の末に、であるから大変だ…」。
つまり、「6年間、火の車で何とか切り盛りしてきた挙句に!」の話しである[2]。

NPRの記者が、「そんなにカットして、仕事に響かなかったのか?」と問うたのに対し、
バーグマン氏、「いや、そんな筈はない。例として、たとえば国際会議(への不参加)がある」、
「たとえばイタリアでの武器削減(条約)交渉だ…」。

その結果は、国務省が管理する何百万ドルもの予算が付いた色々なプログラムが、きちんとマネージできないことを来たす。

NPRの記者:「だけどティラーソン氏は、74000人もの従業員の居るエクソンモービルのCEOとしてやってきたんだから、国務省の人材を十二分に活用する術を心得ていたんじゃないか?」

バーグマン氏:「御尤も。彼が任命されたときは、省内は皆、大変だった(興奮して)。ところが彼は、周りの専門家、生え抜きのベテランの意見に耳を傾けようとはしない…ドアを閉めてしまっている…」







[1] ここでバーグマン氏は、国務省の担当官カントリマン氏が、文字通り出張のため乗機しようとしていた飛行機のタラップから呼び戻されて退職を告げられた話を載せている。

[2] このオバマ時代の後の6年は、共和党が議会を抑えていた。その下での2011年法、Budget Control Actによってである。同法の第一の必要性は、それなしではアメリカ合衆国の予算枠が限度を超えてしまい、支払い不能に陥ってしまうことであった。

カスペルスキーの名

カスペルスキーの名は、ご存知の方も多いであろう。
NPRは、ウィスキーに似た「ウォッカ」に次いで、アメリカ人に一番よく知られているロシア名であろうとしている。

ロシア人、カスペルスキー・エフゲネは、カスペルスキーコンピューター研究所を立ち上げた人で、そのCEO格の人である。
彼は、ロシアの秘密警察のようなKGBの暗号研究所にいたことも、またソビエト軍に所属していたこともある(7月5日NPR)。

そのカスペルスキーについてNPRは、最近のアメリカ合衆国議会の動きを紹介している。
それによると、議会上、下両院の軍事委員会で承認された法律案がある。
これが、各本会議で近く可決成立して大統領のサインの下で法律として成立すると、合衆国軍の内部では、以後一切、このカスペルスキー製品を所有したり、それを使用することが、禁止される。

この絡みでNPRは、5月に議会上院の公聴会で行われた、聴聞会の様子を伝えている。
アメリカの諜報機関のうち、その6つの長が、議員らの質問にそれぞれ答えていた。

「あなたのコンピューターにカスペルスキー研究所のプログラムがセットされていませんか?」。
6人ともがNo!と答えている。
ワシントンにある国際戦略研究センターのサイバーセキュリティの専門家は、諜報機関の長が、このように返事をするのを聞いても、「驚かない」と言っている。
その理由の1つとして、彼がかつてロシア大使と交わした次の会話に言及している。

「…ロシアでは、1度でもセキュリティサービスを受けると、生涯そのお客になる…」、ロシア大使が、そう述べたという。
ところで当のカスペルスキー氏は、こうした懸念が馬鹿げているとして言っている。
「そんなにやせ我慢したって、市場に出回っている一番良いセキュリティサービスが受けられなくなるだけだ!しかも、何ら証拠のない憶測ゆえに!」

カスペルスキー氏は更に、
「必要なら、上院にでもどこへでも出かけて行く…質問に答える…会社は、常に高度の道義心を守り、ITサービスを提供するために真面目に取り組んできた…それなのに、何の根拠もなく疑いをかけることは許されない…」
と憤ってもいる。

たしかに、アメリカ人の中からも、同社の信頼性をサポートする声が挙っている。
アメリカでの「ITの町」、マサチューセッツ州ケンブリッジのフォスター研究所などは、同社の製品を支持する声明を出している。

一方、カスペルスキー氏自らは、「ペンタゴンが、今回の法律を、その言葉通りに実施した場合、自らの売り上げに、どの程度のマイナスが生ずるか…」、懸念を示し始めると同時に、カスペルスキーのセキュリティなしでは、「コンピューター世界は、極めて大きくリスクにさらされた状態になってしまうだろう…」、とも言っている。

アメリカの人種問題

この数十年来、アメリカ、アメリカの歴史、社会、アメリカの法制、同法制史などに興味をそそられてきた。
近時は、その絡みで、遠く別の半球から強制的にこの地に連れて来られたアフリカ系アメリカ人(黒人)らの歴史にも強く惹かれてきた。

そんな訳で、2015年に「アメリカの憲法成立史―法令索引、判例索引、事項索引による憲政史―」を著してからは、次のようなテーマを通して、この線に沿った取り組みを続けている [1]。

断るまでもなく、1つの国、1つの社会の中に、2つ以上の民族が共棲するだけでも大変である。
まして、人種が違い、肌の色が違ったら尚更であろう。
そんな訳で、この処アメリカでのこの問題、人種問題に対して強い関心を抱いている。
もう1つの要素として、この「アメリカでの…」という処にも強調符が付くであろう。
何しろ、世界で最初に自由、平等を謳って建国した国だからである。

ギャラップ社が、この人種問題を巡るアメリカ人の意識調査を行って、公表している。
それによると、実施日は2017年3月1~5日、対象はアメリカ50州内の18歳以上の大人、実施方法は、電話(telephone interview)だという。
ギャラップ社の評価では、95%の信頼度(confidence level)で、サンプリング・エラーは、±4%だという [2]。

ここで、このギャラップ社の調査を採り上げる理由は、ダブルで存在する。
第1に、上記のような、元々の懸念(「共棲するだけでも大変であろう…」)に加え、調査では、正にそう懸念するらしいアメリカ人の率が、ここへきてピン!と跳ね上がった事実を示したと言うからである。

それによると、「あなたは、人種問題を大いに心配しますか」(worry a “great deal ?”)に対し、Yesと答えた割合が、42%となった。
これは、2015年の28%、2016年の35%から一定して上がっているばかりでなく、更に2014年での同じ質問に対する答え、17%の2倍半である。
この数値は、オバマ大統領時代の2010年に、近時の最低レベル、13%を付けていた。
オバマ大統領に先行するG.W.ブッシュ時代も、当初(2001~2003年の間)と、2006年に20%台を示したほかは、ずっと10%台を保ってきた。
つまり、2015年以降の3年間だけが、一方向へ向って、しかも急上昇を示していて、異常な点である。

これにつきギャラップ社は、2つの理由らしきものを挙げている。
1つは、その間に全国的に生じた警察官による黒人の著名射殺事件が集中したことである。
中でも、2016年3月の前回調査以後に、3件が起こっている。

もう1つは、トランプ大統領による人種問題に係る言動がある。
その中でもギャラップ社は、かつての公民権運動のリーダーの1人であったジョージア州選出の民主党下院議員ジョン・ルイス氏との口論を挙げている [3]。

口論は、ルイス氏が、「ロシアによる選挙干渉を受けて当選したような人を、大統領として認める訳には行かない」として、就任式欠席を公言したことに対し(彼は、この手の式に、未だかつて欠席したことがなかった)、トランプ氏が、「all talk …no actionの下院議員だ!」として、やり返したことに始る。

もう1つ、この手の調査で行うのが、政党別の調査である。この調査では、民主党の場合、この問題を懸念する人の割合が、3年間で33%から59%へと倍近くに上っている。
他方の共和党と独立党でも同じく上っているものの、それほどではない。
共和党は2014年の12%が26、30%とそれぞれ上がった後、2017年に29%になっている。
このように、この人種問題に関しては、共和党よりも民主党の人々の方が、ずっと多く懸念を抱いていることが判る。





[1]そのテーマとは、
1.北米大陸奴隷史
2.近世ニューヨークに生きた黒人たち
3.ニューヨーク港に立つ巨大な女神像―移民の国の移民物語―
4.もう1つのアメリカ史―キング牧師と公民権運動の志士たち―
などである。

[2] 電話は、固定式(landline)30%、携帯式70%で、ランダム方式で選択したという。

[3] ルイス氏は、1986年以来ずっと下院議員の職に就いており、かつて1950,60年代のアメリカに、キング牧師らとともに、公民権運動の旋風を巻き起こした6人衆(Big Six)の1人である(運動中に40回逮捕されたことのある彼は、殊に1965年のセルマからモンゴメリへのマーチの時に、郡境の橋の上で警官隊により頭の骨を一部折られている)。

連邦議会下院議員ジョン・ルイス氏

ジョージア州選出の連邦議会下院議員ジョン・ルイス(John Lewis)の名を聞かれた方も少なくないであろう。

アラバマ州の貧農(いわゆるshare cropperという小作農)の三男として1940年に生れ、バプティスト(洗礼派)神学校からテネシー州にあるフィスク大学を出ている。
その間、黒人らの地位向上のための非暴力の公民権運動に加わり、その中心的団体の1つSNCC会長も務めていた。
公民権運動盛んなりし1960年代には、その中心的な人物、キング牧師らを含む、いわゆる“Big Six”の中に入っている。
1986年以来、ジョージア州からずっと連邦議会下院議員に当選してきている。

ルイス氏を公民権運動に目覚めさせたその人も、キング牧師だとされる。
11歳年下の彼は、ハイティーンの時にキング牧師や女性の公民権運動の先人、ロサ・パークスの話をラジオで聞いて、大いに刺激されたという。

ここで同氏のことを述べるのは、メディアでも大きく採り上げていたトランプ大統領との間の喧嘩(2017年1月)についてである。
喧嘩は、先ずルイス氏が、大統領就任式の前1月13日になって「自分はこれまで大事な式を欠かしたことはないが、今回ばかりは欠席する…」と流した。
理由として彼は、トランプ大統領の選挙にロシアが介入していたとのニュースを挙げて、正しい大統領ではない「インチキ大統領だ」としていた。

トランプ大統領も、翌1月14日(土)、直ちに反撃している。
「あの男は何だ!何も実績がなく…只喋りまくるだけじゃないか…」という訳である。
「そんな暇があったら、自らの選挙区のために、なにか1つでも役に立つことをすべきだ!…何しろ酷い状態の選挙区だからな!」

この2人の間の喧嘩につき、先ず「大統領らしくない」と非難するワシントンポストは、ネット上で次のようにコメントに入っている。

「たしかに、ルイス氏は先に攻撃した。それにしても、キング牧師の祝日を控えての大統領の反撃は気を滅入らせ、国民的困惑を引き起こすものだ。人種分離に対し闘い続け、その根気強い活動で、生涯40回も投獄された活動家で、何百万人ものアメリカ人が新たに投票権を行使できるように努力してきた人に対し、自らの頭が割られても、まだ闘い続けた人に対し、『只お喋りなだけ…何も行動しない!』はないだろう。本誌上で、2人の実績を比較してみようじゃないか」。

1960年、トランプ14歳で、ルイスは20歳だ。
2人とも早くも仲間の中で頭が抜け出していた(ルイスはフリーダム・ライダーズの当初の13人の1人となっていた)。

1963年、トランプは私立中学で腕白ぶりで有名になっていた一方、ルイスはあの「職と自由を求めたワシントンへのマーチ」を、キング牧師らとともにリードしていた。

1965年には、例の「血の日曜日」である。ルイスは、セルマからのマーチで橋の上で警察隊により頭を割られた。

1973年、トランプ氏は(父のフレッドとともに)司法省から人種差別で訴えられる。一方のルイスは、全国的な投票権者教育プロジェクトを行っていた。

1981年、トランプ氏は、彼の本拠トランプタワーの土地を買収した(同土地上には古いビルが建っていたが、トランプは追い出すために、電気と水道を止めたとしている)。ルイスは、アトランタ市議会に選出された。

1987年、トランプの本「交渉技術」が出版された。ルイスは、連邦下院議員に選出されている。


以上の対比年表に加え、ワシントンポスト紙のネット担当者は、次のようにコメントしている。

トランプ氏は、そもそもアメリカとその歴史についての十分な知識なしに、この国の著名な公民権運動家を誹謗・中傷しているのではないか。
彼の選挙区を「酷い状況」とか言っているが、ルイス氏の選挙区は、アトランタ市でも中流以上の、黒人が多く住む地区だし、第一、「黒人と言うと、犯罪者みたいにしか認識していない…」。

そんなトランプ氏が先週、今年のキング牧師記念日に、ワシントンのモールにある国立(黒人史)博物館に行くと言っていたので、「それは結構なことだ!」と喜んでいたが、キャンセルしたという。

日系人の集団隔離と最高裁長官ウォレン

アメリカの最高裁判決について知られているものを1つ挙げるとしたら、例のブラウン対教育委員会のケースであろう [1]。

それとともに思い出すのが、その時の最高裁長官ウォレン(Earl Warren)の名であろう。
彼は、20世紀後半入りした10年余り(1953~69年)に、アメリカの最高裁の歴史の中でも、「ウォレン時代」(Warren Court)と呼ばれる時期を作った。

このウォレン時代が画期的なのは、アメリカ人の人権擁護上で問題となることの多い州の権力との絡みで、殊に刑事訴訟手続き上で、連邦憲法上の保障を大きく進めたことであった。
それを憲法(修正Ⅰ~Ⅹと修正ⅩⅣ)の拡大解釈により実現したことであった [2]。

この最高裁でのウォレン時代からは想像もできないが、実は、彼は初めは郡の、後には州の検事総長に就いていた(カリフォルニア)など、法の執行機関での経験が永かった(1931~40年)。
その後の1941年には、カリフォルニア州知事に当選、1945年に再選されている。
彼がこのカリフォルニア州知事の時代の1942年に、例の日本人の隔離の話しが持ち上がり、実行に移されることになる。

実はこの隔離(Internment)案を、かねてから主張していたのが、ウォレン知事であった。
というより彼は、かなり早くから、まだ彼が郡やカリフォルニア州の検事総長時代から日本人に対して、つまり州内にいる日系人に対して、並々ならぬ警戒心を抱いていた。

彼が日本人というものを個人的に知って、そう思っていた訳ではない。
反対に彼も、当時(1930年代)のカリフォルニア州民一般が抱いている程度の漠とした日本人像しか持っていなかった。
郡の検事総長時代に、地元の日本人がいかに問題を起こすことが、ましてや事件を起こすことが少ないか、その程度の知識以外特に持ち合わせなかった。

その中で、検事という職業柄、彼は「地元の治安」問題には特別に心を配っていた。
殊に1930年代の後半に、ヨーロッパやアジアで緊張が高まり、実際にも武力衝突が発生するなどを受けて、1941年春には警告を出していた。
「…騙されてはいけないよ!全体主義者らが、秘密組織を使ってフランスやデンマークやオランダでやったような事件を企んでこないとは限らないからな!」。
そう言って彼は、カリフォルニア州で違法なまま放任されていた地元のドッグ・レースを止めさせ、サンタ・モニカ沖などに停泊する賭博船の取締りを実行し、組織犯罪グループの州内潜入を阻止した。

そんな彼は、日本人が地元の日系人と示し合わせて、その手引きによりアメリカ大陸に潜入して、武器庫や火薬庫を爆破したりしないか、強い懸念を表明していた。
12月7日朝の真珠湾攻撃は、こうしたウォレン知事の抱いていた懸念を、正に裏付ける出来事となった。
開戦の次の年1942年、彼は州内にいる日系人が、「アメリカの防衛上のアキレス腱になりうる…!」とし、「あちこちで日系人によるサボタージュが起こりうる…」と警鐘を鳴らした。
「白人(コーカシアン)なら、我々は顔色を見て、ある程度判断できる…が、日系人ときたら、さっぱり表情が読めない!」とも言っていた。
確かに、1942年中は日本の海軍が太平洋のかなりの部分で制海権を握っており、カリフォルニア州上陸の可能性も否定できなかった。

そんな中で、日系人の集団強制移住の話しが持ち上がるが、その主唱者の1人がウォレン知事であった。
このアメリカ合衆国憲法違反の国の行為に対しては、1943年には早くも批判、反省とともに、解除の動きが出るが、ウォレン知事は、「我々は、第2の真珠湾を、ここカリフォルニア州で起こさせたくない…」と言って、反対した。







[1] Brown v. Board of Education of Topeka, 347 U.S. 483(1954)

[2] この修正ⅩⅣの特権と平等権は、修正Ⅰ~Ⅹの各人権が「連邦政府に対してだけでなく、州権に対しても守られる」という解釈である。この自然法的考え方は、それまでの最高裁判事多数の考えとは一致しないが、修正ⅩⅣの提案・作成者、下院議員John Armor Binghamは、この考えをベースに、修正ⅩⅣの文言を考えたとされる。ウォレン長官は、正にこの解釈を広めた(小著、「アメリカの憲法成立史―法令索引、判例索引、事項索引による憲政史―」八千代出版、2015、p.546以下)。

憲法上の武器の自由の具体化

アメリカでは、人々が手易く拳銃などを入手し、保有している。
そのことは広く知られていよう。
だが、どんな拳銃を、いつ何処で、どんなふうに保有していてよいのか、詳しいことまでは知られていない。
第一、その大元の憲法(修正Ⅱ)の言葉自体も、1行半で簡潔も良い所だ。

「自由な州(国家)の安全のために必要な、よく統制のとれたミリシア(Militia)と、人々が武器を保有し、かつ携える権利は、これを侵すことができない。」

見られるとおり、上記の修正Ⅱの文言は、ミリシア(権)に関する前句に、(個人の)武器保有自由の後句が続く。
2つの句が互いに密接に結びついているように、この文体からは、2つの保障が互いに密接に結びついているものとの推認が働く。

確かに歴史的には、両者間に密接な関連が存在した。
イギリスでの武器所持の自由もまた、イギリス人(そしてアングロサクソン族)に伝統的なミリシア制度と密接に結びついた権利とされてきた。
アメリカでは、ライフル銃保護団体(NRA)などが、時に連邦政府が、何らかの銃規制をしようとすると、このような伝統も援用して、反対している。

しかし、「銃の保有がミリシアを育成・常備するためにのみ肯定される」、との主張は、斥けられている。
最高裁は、修正Ⅱの銃保有の自由をミリシアの育成・常備とは別の、「独立した個人の保身上の権利」、として肯定している [1]。(小著、「アメリカの憲法成立史―法令索引、判例索引、事項索引による憲政史―」p.370より)。

注記の最高裁の判示は、ある意味で画期的である。
何しろ、この武器保有の自由についての憲法条文の問題(深み)に、最高裁は中々、(上告を受理して)自ら入って行こうとしない。
そのため、ミリシア(民兵隊)への参加とは無関係に武器保有・携行の自由を肯定した上記のケースも2008年と、ごく新しい。
その位であるから、「保有・携行」と言っても具体的にどこで、どんな風に保有・携行していてよいか、などの答えは定かではない。

たとえば、「自衛のために使用できれば、十分だ」、として家の内だけなのかどうかも問題になりうる。
いや、実際に昨年(2016年)、サンディエゴ郡の当局が拳銃を外に持って出ることを認めなかったことで、その点が争われた。
しかし、裁判所は、この件でNo!の具体的な判断は示したものの、一般に「公の場ではどうなのか」、という疑問に役立つような判断は一切示さなかった。
これに対し、全国ライフル協会(NRA)は、「失望した…」とのコメントを出している。

とに角、アメリカの裁判所は、なるべくこの銃の問題に立ち入りたくないようであるが、最高裁の判事の中でも、2人はそれとは違う、トーマス判事(Clarence Thomas)は、もう7年近く経つから、最高裁として「新判断を示すべき時だ!」と言っている。

最も求められている判断が、公の場に外出するときに銃を携えられるか否か、どのような条件の下でか、であるが、ほかにも新時代の応用問題として、3Dプリンタによる銃の製造問題、それに襲撃用の銃に対し、どう対応するか、があるという(6月29日NPR)。




[1] District of Columbia v. Heller, 554 U. S. 570(2008)

宗教と州(政治)との分離

ミズーリ州、コロムビア市のルーテル教会の付属幼稚園。
2012年に同園は、園児たちの遊びをより安全にしようとして庭をゴムの表面で蓋うことに決め、州にその資金の拠出申請をしたが、断られた。
理由として州が挙げていたのが、宗教関係の学校などへの州の援助禁止を定めた州憲法である(同じような定めをする州が他に37州ある)。

この決定につき幼稚園が争っていたのであろう。NPRは、最高裁が7-2でこの決定を覆したことを伝える(6月27)。
賛成派の7人の判事のうち2人は、宗教関係の学校、幼稚園などへ税金を提供することを、更にもっと広く自由に是認すべし、と言ったとする。

2人の反対判事のうちの1人、Sotomayor判事は、自らの行っていた幼稚園が宗教関係であったことを踏まえ、宗教と州(の政治)との分離のルールの厳格な適用を主張した。
同じような事件が、他にも5州でかかっているという。
上記の宗教関係の学校などへの州の援助禁止条文は、グラント大統領時代の1875年に連邦憲法(修正Ⅰ)中にも付加されそうになったが、上院を通らなかった。
38州の憲法の中には定められている [1](連邦憲法(修正Ⅰ)で定めるのは、単に「…議会が宗教の設立に係る立法をすることの禁止」だけである)。





[1] グラント大統領は、こと教育に関しては、強硬な公教育派で、私立(宗教関係)の教育機関に公費で補助することに対し、強い反対を抱いていた。その点を考え、当時の下院議員ブレイン(James G. Blaine)氏が、法案を用意したことから、現在38州にあるその条文を、Blaine Amendmentsと呼んでいる。

3人が辞めたCNN

トランプ大統領とメディア界との関係が、刺々しいものになりがちであることは知られていよう。
それでもまだ、会見の場で彼が、指名したりしてご贔屓なのは、マードック氏の息子らが支配しているフォックス・ニューズなどの記者である。
反対に、何かあると槍玉に挙げたがるのが、CNNである。

それが今回は、大統領や大統領のプレス・セクレタリのシーン・スパイサー氏による攻(口)撃だけには止まらなかった。
一旦、CNNがインターネット上に載せたストーリーを、全撤回したうえ、編集部の中心にいた3人が辞めた(辞めさせられる破目になった)のである。
NPRは、その活劇の一部始終を伝える(6月27日)。

そのストーリーというのが、トランプ大統領の腹心の一人、スカラムッチィ(Anthony Scaramucci)氏に係るものである [1]。
一旦ネットに載せたのを全撤廃しただけではなく、スカラムッチィ氏に詫びを入れた。
スカラムッチィはツイッタ―上で、「誰でもあることだ…(詫びは)エレガントだ。正しい…」と、CNNの詫びを受入れたという。

辞めた3人とは、過去にピューリツァー賞に輝いた記者、同ピューリツァー賞のファイナリストになった記者、および2001年入社の上級編集者だという。
しかも、この全撤廃した記事をCNNは、ホワイトハウス関連ニュースの圧巻にしようと、取材チームにはニューヨークタイムズとLAタイムズの記者も引き込んで、えらく力を入れていた。

言ってみれば、トランプ大統領のホワイトハウスにはメディアから見て不透明な部分が多すぎるとして、力瘤を入れていたものであった。
中でもスカラムッチィ氏が、100億ドルに上るというロシアの対外直接投資ファンドの代表と密談していたことが含まれていた。
その時期は、大統領就任式(1月20日)の直前である。
6月22日に一旦ネット上で流された後、6月23日に全撤回された。
記事はCNN内部でも、疑問符を付されていた。
情報のソースが1つであることなど、「公表にはやや問題あり」とされて、社内の評価班が懸念を示していた。

NPRは、今回辞任した3人の氏名なども載せており、更に、CNNとは対照的に右寄りで、普段はCNNに対し批判的な(マードック氏系の)ニューヨークポストの編集者の、「立派!」、「大人の態度だ!」、などの言葉も載せている。






[1] 彼は大統領により1月12日にホワイトハウスの連絡調整官に任ぜられかけたが、ホワイトハウス内のトラブルで立ち消えとなり、6月19日にアメリカ輸出入銀行が副総裁として発令されたという(en.wikipedia.dia)。