アメリカの近親制限法

トランプ大統領が義理の息子、同じくニューヨークの不動産王でもある(他にメディアのオブザーバー社など多数も所有している [1])クシュナー(Jared Kushner)氏のことは、以前にも取り上げた。

トランプ大統領は、就任前から彼をホワイトハウスの上級顧問(シニア・アドバイザー)としている [2]
ホワイトハウス内の身近なところに置いている。
その妻(トランプ大統領の長女)イヴァンカ同様、これまでもそうであったように、トランプ氏の「良き理解者」として活躍するだろうことは、自他ともに認めている。


大統領が、このようにホワイトハウスのシニア・アドバイザーを任命するに当っては、裁判官や政府の高官などの場合とは違って、憲法上も議会に諮る必要は全くない。
ただ問題になるとすれは、No.81で述べたように、近親制限法(Anti-Nepotism Act)がひっかかるだけである。


同法の事は、No.81にも述べたが
J.F.ケネディ大統領が弟のロバートを司法長官に任命しようとしたことから、ジョンソン副大統領などが懸念を示して必要となり、そこでの脚注で示したように、1967年に成立している。

今回のトランプ大統領によるクシュナー氏の上級顧問任命にも、同法の禁止が及ぶか否か、必ずしもすっきりしていない。
そこで、当日にクシュナー氏本人が、その間の「俸給、は辞退する」、と公言した。


同法解釈で灰色となる1つが、政府の機関への任命という法文である。

クリントン大統領のとき(1993年)に問題となったが、妻のヒラリー氏をホワイトハウス内の健保問題改革担当顧問としたことで、それが、同法で言う機関でないか、が争われた。
全国医師会のような団体が早速訴訟を起こしてきたが、連邦控訴裁判所は、
「内閣の各省(長官)などには当てはまるが、ホワイトハウス内の大統領のスタッフには当てはまらない…」
と判断している。
ヒラリー氏の場合も、ファーストレディの肩書の他は、健保問題改革担当顧問となっただけで、何らかの報酬を貰うこともなかった。

今回は、念を入れて司法省の顧問弁護士が意見書を書いてきた。
それによると、前記の1967年法の1978年改正を受けて、
「大統領は、ホワイトハウス内のスタッフ任命については、何らの法律による制約も気にかけなくてよい…」と言う。

しかし、1978年改正の前後に拘らず、司法省のこれまでの見解は厳しいことが多く、2,3の人が、司法省が「うん」と言わないために任命を拒まれてきた。

第1例が、カーター大統領で、息子を無給でホワイトハウスのスタッフにしようとしたが、駄目だった(1977年)。
第2例が、親戚をある委員にしようとしたレーガン大統領によるもので(1983年)、
第3例は、義弟と異父妹について、オバマ大統領が同じように任命を拒まれている。

以上は、近親制限法の話しであるが、これ以外に気を付けねばならないのが、利益相反を制限する法律と、公務員に係る資産内容などの情報公開義務の問題がある(2017年1月21日、nytimes.com)。


[1] クシュナー氏は、オブザーバー社の所有権を親族に委ねることを決めたとしている(2017年1月9日、businessinsider.com)。
[2] クシュナー氏のシニア・アドバイザーとしての役目分担は、
  (ⅰ) 中東問題の解決、
  (ⅱ) 公民権行動プロジェクト、
  (ⅲ) 自由貿易の推進、
だという(2017年1月21日、nytimes.com)。
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