大金持ちの発言力

アメリカには、何でも桁違いに大きいものがある。その1つが「大金持ち」である。

大金持ちの定義を、仮にビリオネア(billionaire)、資産10億ドル(1100億円)以上としよう。
フォーブス誌は、1982年以来、「世界の大金持ちトップ400人」のリストアップを始めている。
その年は400人中、ビリオネアは13人だったが、今年は全員がビリオネアであるという。

それらの「トップ400人」の中からNPRは、今では誰もが知っているような名(household names)として、ゲイツら(Gates)、コウクら(Kochs)など、5つばかり挙げている。
その5番目のマーサーら(Mercers)が、次の「イデオロギーの争い」に関わってくる。
それもトランプ氏に関係する。

さて、NPRはそんなアメリカでは、大金持ちによる慈善行動競争が始っているとし、競争の激化が政治を左右に揺さぶるまでになっていると伝える(4月16日NPR)  [1]。
彼ら博愛主義の巨人らが、イデオロギーの闘いを戦う様を、まるでギリシャ神話中の神々が、互いに雷光を撃ち合う様に例えている。
その上で、なぜアメリカでは大金持ちが、かくまでに互いに博愛主義者となって、自らの政治的主張を押し通そうと、しゃかりきになるか、その理由を次のように説明している。

先ず、寄附金に係る連邦税制の問題がある。
自らの主張に沿う政治家を後押しして、その政治家に寄附をすると、連邦税がかかってくる。
しかし、ワシントンにわんさと存在する、○○研究財団(think tank)のどれかに寄附をしても、無税である。
そうしておいて、その財団が、お目当ての政治家の耳元で、そっと囁くようにするのである [2]。

右と左の勢力が、この仕組みをフルに使って政治を動かしている中で、専門家は結論として、右の方が、より大々的にワシントン在の大手○○研究所らを活用できるとしている。
トランプ大統領が、「ワシントンを作り変える…連邦税制も大幅にカットする…」などと言っている今日のご時世では、大金持ちがこの寄付金税制を通して政治を動かす力は、ますます増大しよう。
その右の大関・横綱のような研究所の1つが、ヘリテージ・ファンデーション(Heritage Foundation)である  [3]。

トランプ政権に対し、大きな発言力を行使している。
連邦上院議員を辞めて、同研究所の代表となっていたサウス・カロライナ出身のドミント(DeMint)氏は、4年余りのマネジメント成績の不良を問われて、理事会により辞めさせられた [4]。
一方、やや左寄りの(いわゆる「リベラル」な)研究所、そこへの大口寄附者として、前記のゲイツらに係る財団 [5]や、ウォルマートのオーナーであるウォルトンら(Waltons)などの名が挙がっている。

彼らは、時に新大統領トランプ氏の考えを攻撃することもある。
主義としての「保守派」というよりは、むしろポピュリスト大統領としてのトランプ氏の登場により、雷光を撃ち合うこれら左右のthink tankにも、ホワイトハウスのポピュリストらと、どのように調子を合わせたものか、戸惑いのようなものが生じてきている。








[1] NPRのタイトルは、ある本の題をそのまま引用して、「アメリカでは博愛主義が、右と左のイデオロギー間の戦士になっている・・・」となっている。

[2] NPRは、こうした現象を「党派的主張と政策研究との間の壁が崩れる…」(barriers crumble between policy research and partisan advocacy…)と言っている(5月2日)。

[3] ヘリテージ・ファンデーションには、いくつかの実働部隊的法人などがあるが、その1つ、政治的メディアとして、Daily Signalがある。

[4] その理由として、ドミント氏が余りにも政治的・闘争的にやりすぎて、学問的・研究的要素を抑圧したとしている(5月2日)。

[5] The Bill & Melinda Gates Foundationは、トランプ大統領が変えようとしている、最近までのアメリカの教育指針Commm Coreを推進していた。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント