フロリダ州での20件の殺人事件

アメリカのフロリダ州で、中々興味深い紛争が進行している。
それも法的、憲法学的に興味深い。

同州では、検事総長に当る職位に、初めて黒人(女性、民主党)が公選された(1月)。
そのアヤラ女史が、手元に来ている20件の殺人事件につき、法定刑である死刑を選択しないことを宣言。
その宣言の中で彼女は、「死刑制度は問題を抱えており、正義の実現に資するとは、限らない…」と声明していた。

一方、この宣言に驚き、怒った共和党の州知事スコット(Rick Scott)氏は、その20件の殺人事件をアヤラ女史の手元から取り上げて、別の検察官に与えてしまった。
これに対してはアヤラ女史も黙っていない。
早速20件の殺人事件を知事の下から取戻すべく、州の最高裁などに訴えた。
「これは、自分が合衆国憲法下で有する裁量権の問題である」と言っている [1]。

彼女は更に、知事の行為は「検察官独立の原則」を侵すもので、知事としての権限乱用に当るとしている。
一方の知事の方は、訴えが連邦地裁と州地裁の双方に出された日に
「すべての州民は、検察官が法の定め通り職務を行うことを望んでいる…」
式のことを、メディアに対して述べた。

州議会下院のコーツ議員(共和党)は、この件で知事に電話して、
「彼女は、法の定めを執行すべき立場なのに、立法府の権限内に入り込んだ…」
として彼女から事件を取り上げるよう要求した第一人者である。
実際フロリダ州の立法府は、裁判所宛てにそうした意見書を提出している。
フロリダ州の検察官仲間からも、多くがこの件で知事の側についており、フロリダ州検察官協会長も、それと同じ意見を表明している。

しかし全国的に見ると、50人近い法曹が、アヤラ女史への支持を表明している。
中には、アヤラ女史の死刑を巡る扱い方に必ずしも賛成ではないが、検察官独立の問題のそれ、中でも州として初の黒人検事総長として公選されてきたアヤラ女史に対する問題として応援し、
「アヤラ女史は選挙民に対し責任があるので、知事に対してではない…」
と、知事の出方に疑問を唱えている人もいる。

州の立法府の方も、感情的になっている。
アヤラ女史の下から21人の部下と、その分の予算百万ドルを削ることを考えているというのだ。
理論的な問題であるとともに、正に政治の問題となっている。





[1] 彼女は、自分はしょっちゅう、部下の検察官から「どんな公訴が適当か」とか、「刑の重さはどの程度がいいか?」とか、「上訴すべきか?」とか、質問を受けると言っている(2017年5月8日npr.org)。
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