米軍の元将軍

トランプ政権の下で40年ぶりにアメリカでの特別検察官職(Special Counsel)が設けられ、以前FBI長官などをしていた弁護士モラー(Robert Meuller)氏が、司法省副長官によって任命された。
メディアは一斉に40年前のウォーターゲート事件に言及しつつ、モラー氏をニクソン大統領の下での特別検察官になぞらえて報じていた。

モラー氏を特別検察官に任命するに際して、司法省内では他に数人の候補者リストが用意されたが、その中の1人が、ペトレイウス(David H. Petraeus)氏であった。
かつてアメリカ軍によるイラク戦争やアフガニスタン戦争の総司令官を務めた。元CIA長官でもある。
NPRは、この元将軍(2016年大統領選挙の初期段階では、共和党が考えた4,5人の元軍人候補の1人にも入っていた)について、ある女性との艶ぽい話を伝えている(5月29日)。

話しは女性が20年ぶりに訪れたニューヨーク奥地のウェストポイントから始る。
時は2016年5月、ハドソン河を見下ろすそこには、南北戦争の戦士者らを祭った、高さ15メートルの記念碑が立っている。
4年前、その女性はその名を世間に響かせてしまったが、彼女はウェストポイントが女性も受け入れるようになった最初の年の、成績トップクラスの卒業生であった。
彼女の名はパウラ・ブロードウェル。
一方の将軍は、プリンストン大学からPh. D.の学位を与えられていたばかりか、イラク戦争では、味方の何倍もの数の戦車隊を敵に回して勝利した。
NPRは、「片腕の腕立て伏せ」(“one-armed push-ups”)をやった人、と言っている。
現代「ダビデ王」と仇名された人だ。

一方の彼女は、オリンピック、トライアスロン選手であることの他、大学ではマスターの学位を2つ有し、ハーバード大学の研究員でもあった。
実はこのハーバード大学時代に、彼女は将軍と会った。
かつての教え子と将軍との間の2人の関係が始ったのは、2006年の事である。
彼女と、今や高名を誇るペトレイウス将軍との間の秘められた情事を探知したのも、アメリカの諜報機関の1つ、FBIであった。

2人の関係が深まるにつれ、というか、それに併行して、彼女は将軍の伝記を書くことを申出、了承されていた。
軍の機密に亘るような資料が、口頭のみならず文書(デジタル)でも流出し出したのはその時からである [1]。
ついでに言うならば、ブロードウェル、つまり彼女は、今は43歳、将軍は63歳だから、2人は20歳違うということである。
とに角この情事は、FBIによる諜報活動で探知されるが、それをいかに表に出すか、いつ出すかについても、現在の特別検察官、当時のFBI長官モラー氏など限られた人々が、かなり頭を絞った。

将軍は、秘密漏洩罪などにより、2015年に既に執行猶予つきの2年の刑と罰金10万ドルを課せられたが、女性の方は別に刑事罰の対象とされることはなかった [2]。
なお、陸軍少佐から中佐への昇進はストップになった。
そのブロードウェル夫人であるが、ことが白日の下に出るにつれ、最大の問題は自らの家庭の夫スコットや子供(8歳と10歳の息子)との、関係の修復であった。

すべてが白日の下に暴露されたあの日から4年経った2016年、元将軍のペトレイウス氏は、ニューヨークの投資銀行のパートナーに収まり、いくつかの私立大学とも役員などとして関係を持っている。
これに対し、ブロードウェル夫人は言う。
「軍の戒律は、ゼロ欠陥主義で厳しいのよ!」。






[1] NPRは、将軍が自らの手帳を彼女に貸し与えていたと伝える。その他、2人は2人専用のメールアドレスを共有し、そこを通して(暗号化なしに)頻繁にやり取りしていた。

[2] そのほか、FBIが彼女のパソコンを押収してしまったため、Ph.Dのための論文は諦めた上、あちこちに求職のための働きかけをしたが、その能力などは認められつつも、「メディア対策が出来ない…」などとして、何処でも断られているという。
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