危機(crisis)のアメリカ社会

このところアメリカ社会での「薬物の蔓延」ぶりについて数多く採り上げた。
アメリカ社会が何らかの形で瓦解するのではないか、とても懸念している。
現に、その兆候は見えている。

昨日のNPRからも、その片鱗が見える。
1つは、テネシー州ナッシュビルの市長の22歳になる一人息子が、薬物の取り過ぎ(overdose)で死亡したニュースである。
2つの追悼会が行われ、大勢が参加した。
市長は何も喋らなかったが、夫(Vanderbilt大学の商業の先生)は喋った。

NPRは、その市長にインタビューしていて、そこで市長はこう言っている。
「我々皆が、この同じ過ち、信じられない大変な過ちを犯している…しかも、その問題からただ歩み去ろうとだけして…彼は、歩み去ろうとしなかった」

その22歳の息子が薬物の取り過ぎでなくなったコロラド州ジェファーソン郡では、「2002年から2014年の12年間で、薬物の取り過ぎでなくなった人数が、100%増加した」、とNPRは記している。

一方、ナッシュビル市警察は、麻薬対策で市の予算を大幅に増やしている。
市長は、「もっと力を入れろ!」として、「もし、誰か1人でも薬物問題に直面している子供を見たら、決して尻込みせず手を貸して…」、と述べた。

もう1つNPRが引用するのが、ホワイトハウスの委員会から出された正式の報告の内容である [1]。

大統領がこの麻薬対策で特別に委員会を設けた。
その中では、大統領がこれを「アメリカ国民の健康問題上の国民的な危機」(National public health emergency)と捉えた。
財政を含む特別措置により、この危機(crisis)を止めるよう求めたものになっている。

アメリカが国家として危機宣言を出す?これまでハリケーンなどの被害で、特定の地方向けに出したことは有ったが、それとは規模も性質も違う。
総じて言うと、このような健康問題が本来、州の問題だとしてきたこれまでの考え方をもう止めて、連邦が積極的に係って行くべきだとしている。

大統領が、ホワイトハウスとして、直接この薬物問題の対処に乗り出したことは、如何に危機感が迫っているかを示している。
同委員長を務めたニュージャージー州のクリスティ知事が言う。

「薬物の取り過ぎによって、毎日142人のアメリカ人が亡くなっている。これは、3週間ごとに9.11事件が起きているのに等しい」。
「国全体として危機宣言をせねば」(must declare a national emergency)。

委員会が出した11の勧告の1つが、前回述べたVivitrolの成分であるnaltrexoneに似た(それよりは安い)naloxoneを麻薬対策のパトロール隊員全員に持たせるというものである。

この薬物の取り過ぎ(他にタバコ、アルコールの取り過ぎも含む)から来るアメリカ国民の健康上の被害は、年間約1370億ドルと言うから、15兆円くらいであろうか。
それに由来する犯罪、失業などの付帯損失を含めると、70兆円近いとされる。
薬物使用の飛び抜けた第1位が、No.190でも採り上げたマリファナで、以下、ずっと下に、精神安定剤、幻覚剤、コカインなどが来る。





[1] ホワイトハウスの“Commission on Combating Drug Addiction and the Opioid Crisis”という委員会である。その名前の中に「危機」(crisis)を唱えていて、ホワイトハウスの抱いている危機感を表わしている。
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