人種問題を抱えた国、社会

「これらの美しい彫像・記念碑…わが国の歴史と文化までが引き裂かれるのを見ることは悲しい…」

メリーランド州都、アナポリスの州議会場の庭に1872年に建てられた、当時の合衆国(第5題)最高裁長官ターネイ(Roger Taney)氏の彫像が取り壊された話を耳にしたトランプ大統領は、こう述べた。

ターネイ長官は、合衆国最高裁による判例としては最もくだらない決定とされる、黒人奴隷に係る判決 [1] を下した人として、アメリカの憲法学者から広くマイナス評価されている (同長官は、メリーランド州出身である) [2]。

その彫像には、その後、長官や事件についての説明文が銘板として付け加えられていた。
今後は彫像は、州の古文書等保存場所に安置されるという。

今日、アメリカの黒人らは人口の13,4%程度を占めるに過ぎない。
しかも、1世紀半前まで、その大半が奴隷、つまり白人らから見て牛馬に近い扱いであった。
その後の約1世紀の間も、いわゆるジム・クロウ(Jim Crow)という南部各州法によって、実質的に奴隷と大差ない扱いをされてきた。

そのアメリカでの黒人に対する関係で、アメリカ社会は、メディアを含め、大変な気を使っている。
黒人も、たとえば“Black Lives Matter”運動のように、声を挙げ出している。

その同じメリーランド州議会場の庭にも、1996年には、合衆国最高裁で黒人として最初の判事となったマーシャル判事の像が建てられた。
州の「議会信託財産」は、更に黒人女性で、奴隷解放運動に身を捧げたタブマン(Harriet Tubman)氏と、同じく黒人の奴隷解放大運動家、フレデリック・ダグラス(Frederick Douglass)の像を建てることを計画しているという。

上記のようなターネイ長官像の除去についてメリーランド州議会は、8月16日、メールによる議決により決定していた。
これを受けて州知事も、「この時代との決別が大切だ!」述べている。

NPRは、同州の動きは、「今アメリカで広がりつつある南部連合にゆかりのある記念碑などを除去しようとする風潮の1つの動きに過ぎない」とし、先週末のシャーロッツヴィルでの乱闘騒ぎが、そうした動きに一段と拍車を加えたとしている。






[1] Dred Scott v. Sanford, 60 U.S. 393 (1857)、なお事件の憲法的評価につき、「アメリカの憲法成立史―法令索引、判例索引、事項索引による憲政史―」八千代出版、2015年、p.514,5参照。

[2] NPR(8月18日)は、ハーバード大学教授オグレトリー(Charles Ogletree)氏の評価、人種問題に関しての“most regretted and despised decision even…”を引いている。
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